今日こんな映画観た

日本未公開・未ソフト化の超マイナー映画から、誰もが知っている超大作まで、映画についての鑑賞メモ。
基本的にストーリーは結末まで記しているため、ご注意ください。

Genre:Thriller

カール・ハインツ・マルティン(1920)『朝から夜中まで』

Von morgens bis Mitternacht
製作国:ドイツ
上映時間:69分
監督:カール・ハインツ・マルティン
出演:エルンスト・ドイッチュ/エルナ・モレナ/ローマ・バーン/アドルフ・エドガー・リホ

カール・ハインツ・マルティン監督の本作は、ロベルト・ウイーネ監督の『カリガリ博士』(1919)でも用いられたドイツ表現主義的な手法を更に徹底したスタイルで描いた作品です。悪夢的に傾いたセット、病的な扮装をした登場人物たちが一種の悪夢的な世界を演出します。

本作は製作後、本国ドイツでは上映されず、1922年に日本で上映されたのが、当時唯一の一般上映だったようです。また、フィルムも残っておらず、日本に唯一残っていた無声版のプリントに、ミュンヘン映画博物館がインタータイトル(字幕)を付けたバージョンを、今回見ることができました。今回の上映はフィルムセンターの「美術館と映画:フィルムセンター以前の上映事業」という特集上映の一環です。

銀行の窓口に勤めていた男(エルンスト・ドイッチュ)は、銀行に1万マルクの融資の依頼にきた女性(エルナ・モレナ)に一目惚れ。思い詰めた男は、ちょうどその時に50万マルクの振込依頼があったのをいいことに、その金をポケットに詰め込んで銀行を飛び出してしまいます。

女の滞在しているエレファント・ホテルに行き、50万マルクを見せて一緒に高飛びしてほしいと言う男でしたが、彼女にはもう息子(ハンス・ハインリヒ・フォン・トワルドウスキ)もおり、男は当然冷たく追い出されてしまいます。警察に追われる身となった男は、一旦は家族の元に戻るものの、すぐに街へと飛び出してゆくのでした。衣装を新調したり、娼婦を買おうとしたり、競輪に大金を賭けてみたりと放蕩の限りを尽くそうとする男でしたが、救世軍に助けられたことにより、金の空しさと、家族の大切さに目覚めるのでしたが……というお話。

オープニング、傾いた銀行のセットで、白と黒の奇抜な衣装を着たボサボサ髪の男が事務作業をしていますが、この男こそ主人公。目の回りを墨で円く塗ったりと、これこそ表現主義、といったような演出で始まります。

映画は上に書いた筋で進んでゆくのですが、主人公が絶望的な方向に進もうとするごとに、物乞い、娘、娼婦、救世軍の娘などの顔が骸骨と二重写しになる演出が面白い。また、一見奇麗なことを言っていた救世軍の人々が、主人公が金をばらまき出したとたん、奪い合ってけんかを始めるなど、皮肉のきいた描写も面白い。特に最後にすがった救世軍の娘の行動がまた面白い。

クライマックス、拳銃自殺した男の上にヨハネによる福音書の「ECCE HOMO(この人をみよ)」という文字を表示させるなど、最後まで皮肉が利いた演出になっていました。ただ、本作では傾いたセットや奇抜な演出などのドイツ表現主義的手法が、コメディカルなおかしみとスレスレになっているような部分もあり、ぼくは好きですけれど、そう言った点が残念に感じる向きもあるかもしれません。

フレッド・オーレン・レイ(1986)『地獄の武装都市/復讐のターミネーター』

Armed Response
製作国:アメリカ
上映時間:87分
監督:フレッド・オーレン・レイ
出演:デヴィッド・キャラダイン/リー・ヴァン・クリーフ/マコ岩松/ロイス・ハミルトン/マイケル・ベリーマン

アメリカB級、いやE級映画界の帝王のひとりとも言えるフレッド・オーレン・レイが監督したアクション映画。リー・ヴァン・クリーフが出演しているということで見ることにしたのですが、映画冒頭、フレッド・オーレン・レイ・フィルムとクレジットが出た瞬間覚悟を決めました。しかし、見てみると意外にもなかなか面白い。それもそのはず、本作はフレッド・オーレン・レイの映画では破格とも言える150万ドルという予算(それでも低予算)で製作されたそうです。

警官を引退したバート・ロス(リー・ヴァン・クリーフ)には3人の息子がいました。長男はベトナム戦争帰りでバーを経営しているジム(デヴィッド・キャラダイン)、次男は私立探偵のクレイ(デヴィッド・ゴス)そして三男のトミー(ブレント・ハフ)。彼ら4人とジムの妻サラ(ロイス・ハミルトン)と娘のローレンが彼のバーにいるところにクレイの相棒コーリ(ロス・ハーゲン)がやってきます。なんでも日系ヤクザのタナカ(マコ岩松)が仕事を依頼したいというのでした。

タナカの事務所に行ったコーリとクレイは、仏像と現金の交換のための使者の仕事を頼まれます。現金を持って指定の場所に行った二人でしたが、そこでコーリが裏切り、金を持って逃走します。深手を負いながらも仏像を手に入れたクレイは、兄弟と父の元に向かいますが、そこで死んでしまいます。

そして、コーリに騙されてクレイこそが金と仏像を持ち逃げしたと思い込んだタナカは、ロス家を襲撃、トミーを殺し、サラとローレンを人質に取ってジムを脅すのでした。怒りに燃えたジムは父親と共に銃を持ってタナカとの取引に向かうのでした……というお話。

元はといえばコーリが全て悪いのに、いつの間にかロス家とタナカ一家の戦いになってしまっているのがストーリーとして何とも……。コーリのストーリー的な処理もかなりいい加減ですし。というように、脚本にはかなり粗があるのですが、そこに目をつぶって見ればアクションとしてはなかなか面白い。

デヴィッド・キャラダイン、リー・ヴァン・クリーフという(少々旬は過ぎていたものの)二大スターを配したクライマックスの銃撃戦はなかなか魅せてくれます。また、マコ岩松が悪役で出演しているのも驚き。キャストはなかなか豪華な映画です。しかしキャラダイン、ロサンゼルスの街なかで手榴弾ぶん投げまくるのは、いくらなんでもどうなんだ(笑)

リー・ヴァン・クリーフ・ファンとしては、老年に差し掛かった彼が現代劇でアクションを見せてくれていたり、銃撃戦に参加してライフルをぶっ放している姿が見られただけでもう幸せでした。

マイケル・ドライハースト(1980)『ハイパー・ウェポン/最終狙撃者』

The Hard Way
製作国:イギリス
上映時間:88分
監督:マイケル・ドライハースト
出演:パトリック・マクグーハン/リー・ヴァン・クリーフ/エドナ・オブライエン/ドナル・マッキャン

マカロニ・ウエスタン後のリー・ヴァン・クリーフ出演作品のひとつ。アイルランドの荒涼とした大地を舞台にした骨太のクライム・スリラーです。監督のマイケル・ドライハーストは主にプロデューサーを務めていた人物のようで、監督作はこの一本のようですね。主演のパトリック・マクグーハンはTVドラマ「刑事コロンボ」や「プリズナーNO.6」で有名になった俳優のようです。ぼくは恐らく今回初めて接しました。

腕のいいスナイパーだったジョン・コナー(パトリック・マクグーハン)は引退し、荒涼たるアイルランドの片田舎でひっそりと暮らしていました。しかし、そんな彼の腕を必要としたマクニール(リー・ヴァン・クリーフ)によって、妻のキャサリーン(エドナ・オブライエン)を人質に、半ば無理やり引きずり出されてしまいます。暗殺のターゲットはダブリンからパリへ飛行機で向かう黒人神父。

着々と暗殺の準備を整える一味でしたが、ジョンは土壇場で裏切り、マクニールの手下を殺して逃走します。彼を殺すため、マクニールはライアン(ドナル・マッキャン)を始めとする腕利きを雇いますが、地の利を得たジョンには敵いません。ジョンを自らの屋敷におびき寄せ、決着をつけようとするマクニールでしたが……というお話。

地味です。全編非常に地味。登場人物も主人公であるマクグーハンや敵役であるクリーフを始めおっさんだらけ。しかし、面白くないかというとそんなことは全くなく、緊迫感あふれるカット割りや間など、緊張感を高める工夫がいろいろと凝らされています。アイルランドの荒涼とした山地も映画の雰囲気作りに非常に役立っていました。

クライマックスの決闘も、配電盤(ブレーカー)を使ってジョンを翻弄するマクニールと彼の居所を必死に探すジョン、というなかなか工夫の凝らされたもの。ただ、まぁ、最終的にどうなるかは終盤には完全に読めてしまうのが欠点といえば欠点か。

また、ところどころに妻であるキャサリーンのモノローグが挿入されるのですが、(特に序盤は)本編との繋がりが分かりづらく、テンポを悪くしてしまっていた感じがあるのが残念です。

しかし、クリーフは当然として、マクグーハンも渋い燻し銀のスナイパーを好演していました。スナイパーものというと、『殺しのテクニック』(1966)や『狙撃』(1968)が思い出されます。本作はそれらに勝る……とは言えませんが、銃器の描写も非常に丁寧であり、見応えのあるスナイパー映画の一本と言えるでしょう。

本作はallcinemaでは劇場映画として紹介されているのですが、IMDbではTV映画として登録されているようです。どちらが正しいんだろう……?

リカルド・フレーダ(1959)『カルティキ/悪魔の人喰い生物』

Caltiki - il mostro immortale
製作国:イタリア/アメリカ
上映時間:76分
監督:リカルド・フレーダ
出演:ジョン・メリヴェール/ディディ・ベレゴ/ジェラルド・ハーター/ダニエラ・ロッカ

戦後イタリア映画界でもっとも早くホラー映画『I vampiri』(1956)を製作したリカルド・フレーダ監督が、撮影監督を務めた後の巨匠マリオ・バーヴァと組んで作り上げたモンスター・ホラー映画。

マヤ文明の謎を解明するためにジャングルに分け入っていたジョン・フィールディング教授(ジョン・メリヴェール)を隊長とする調査隊。ある日、二人の研究者が遺跡に隠された洞窟を見つけますが、何者かに襲われ、一人は行方不明となり、もう一人も何とかキャンプに戻ったものの、ショック状態となってしまいます。

翌日、ジョンにマックス(ジェラルド・ハーター)、ボブ(ダニエル・ヴァルガス)の3人は洞窟の調査に出かけます。そこにはマヤの唯一神カルティキの像が隠されていました。生贄を沈めた泉を調査する3人でしたが、潜水していたボブが謎の生物に襲われ死亡、財宝を回収しようとしたマックスの右腕に謎のモンスターが絡みついてしまいます。ジョンの助けにより何とか脱出した2人でしたが、マックスの右腕には怪物が絡み付いていたのでした。

メキシコシティに戻り、手術を受けたマックスでしたが、右腕は完全に侵食され、このままでは早晩毒が脳まで回ってしまいます。マックスを助けようと、ジョンはロドリゲス教授(ヴィットリオ・アンドレ)と共に調査をすすめると、どうやら放射線に反応して怪物は動いているということが判明します。しかしその時、ちょうど放射性の彗星が地球に近づいてきており、そして自暴自棄になったマックスは看護婦を殺し、病院を抜けだしてしまうのでした……

という、ストーリー的にも演出的にもなかなかまとまりがあって面白い作品です。単なるB級モンスター映画だと思って見ていると、思わぬ拾い物をした気分になりますね。同時期のロジャー・コーマンの『金星人地球を征服』(1956)と比べても、費用もこちらのほうがかかっているし、ストーリーも練られている感じがします。

また、本作には後のマカロニウエスタンに欠かせない俳優が数人登場しているのも見どころのひとつ。まずは『Le due facce del dollaro』(1967)や『黄金無頼』(1967)のジェラルド・ハーター。本作では歩くフラグ製造機であるマックスを演じていますが、何というかこう、『金星人地球を征服』のリー・ヴァン・クリーフを思い出しますね。あの貫禄ある名優がこんなことを、的な意味で。

もう一人は登場シーンは少ないながら、ロドリゲス教授の助手を演じていたジャコモ・ロッシ=スチュアート。『荒野のみな殺し』(1966)などの低予算マカロニウエスタンで主役を多く演じた俳優です。

ジュリオ・クエスティ(1968)『殺しを呼ぶ卵』

La morte ha fatto l'uovo
製作国:イタリア
上映時間:100分
監督:ジュリオ・クエスティ
出演:ジャン=ルイ・トランティニャン/ジーナ・ロロブリジーダ/エヴァ・オーリン/レナート・ロマーノ

養鶏場を営む仮面夫婦を中心とした愛憎劇を描くサスペンス・スリラー。監督は『情無用のジャンゴ』(1966)のジュリオ・クエスティ。主演は『男と女』(1966)、『殺しが静かにやって来る』(1968)のジャン=ルイ・トランティニャンとその美貌で知られたジーナ・ロロブリジーダという、意外にも(?)豪華な組み合わせ。

 主人公の男は、妻に満たされぬ思いを娼婦相手に発散する変態的な嗜好を持っていた。そして、妻の姪とも通じ妻を殺す計画を立てるが……。妻に劣等感を抱く男を描いたサスペンス・スリラー。

ストーリー的には『デボラの甘い肉体』(1968)と通じるところのある本作ですが、『情無用のジャンゴ』同様、クエスティ監督はストーリーなどには興味はないと言わんばかりに悪夢的な映像美や、動画編集、そしてそれぞれの人間のエゴイスティックな部分を暴き出す演出に精を出しています。『情無用のジャンゴ』では、はっきり言って彼の嗜好・志向とジャンルとしての特性があまり合っておらず、首を傾げざるを得ない部分もありましたが、サスペンス・スリラーという本作には意外にも合っており、なかなか見所のある映画に仕上がっていました。

一方で、『情無用のジャンゴ』に比べると、直接的なスプラッター描写は少なめ。オープニングの『サイコ』(1960)を思わせるカットバックは些か失笑ものではありますが、必要以上には血を出さず、前作よりも少しは落ち着いた雰囲気の作品に仕上がっています。

ただ、まぁ、ストーリーそっちのけの悪夢的な世界観はクエスティ監督の持ち味なのか、あまり変わってはいませんね。

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