今日こんな映画観た

日本未公開・未ソフト化の超マイナー映画から、誰もが知っている超大作まで、映画についての鑑賞メモ。
基本的にストーリーは結末まで記しているため、ご注意ください。

Genre:Romance

ケリー・アズベリー/ローナ・クック(2002)『スピリット』

SPIRIT: STALLION OF THE CIMARRON
制作国:アメリカ
上映時間:84分
監督:ケリー・アズベリー/ローナ・クック
出演(声): マット・デイモン/ジェームズ・クロムウェル/ダニエル・スタディ

天国にいちばん近い島』でも書いたように、一週間ほどニューカレドニアに滞在していたのですが、その間にホテルのTVで本作が放映されていました。当然音声はフランス語吹き替え、そして字幕なしという鑑賞環境だったのですが、主人公が馬であり、また子ども向けのアニメーション映画ということもあり、さほど困難なく内容を理解して鑑賞することができました。

監督としてはケリー・アズベリー、ローナ・クックの二人がクレジットされています。アズベリーのほうは日本公開作としては本作の後に『シュレック2』(2004)がある模様。ただ、こちらも共同監督のようですね。声の出演であるマッド・デイモンを始めとする俳優陣は、ぼくが観たのがフランス語吹き替えであるため、当然違う俳優に変わっていました。音楽を担当したのはハンス・ジマーです。

 伝説の野生馬“スピリット”が数々の苦難を乗り越えて雄々しく生きる姿を描いたドリームワークス製作の壮大なアドベンチャー・アニメ。主人公スピリットの内面心理がナレーションにより語られる以外は、動物たちに一切セリフはなく、鳴き声、あるいは動きや表情の繊細な描写で感情を表現する意欲的な試みがされている。監督は共に本作で劇場映画デビューのケリー・アスバリーとローナ・クック。ブライアン・アダムスが本作のために新作6曲を提供している。
 西部開拓前のシマロンの大地。野生馬の群に生まれたスピリットは母の愛情に包まれ、大自然の中でのびのびと育つ。やがて、勇敢で立派な雄馬に成長したスピリットは、群れを率いる頼もしいリーダーとなっていた。ある日、彼は生まれて初めて人間に遭遇する。彼らは野生馬を捕らえ、シマロンの地を荒らしているカウボーイたち。スピリットは自分を身代わりに仲間を逃がした。捕まったスピリットだったが、人間たちの調教に決して屈しようとはしなかった。そんなある日、スピリットはそれまでの人間とは違う顔をした若者、コタ族のリトル・クリークと出会うのだった…。

以前はアメリカの西部劇と言えば保安官を始めとする白人は正義の象徴、インディアンたちは悪の象徴でした。時代は変わり現在ではインディアンが正義であり、白人が不正を行っている、というような単純に裏返したような描写の映画も散見されます。しかし、どうもぼくはそういう映画が好きではないんです。何となく、虐殺を行った白人のエクスキューズな感じがしてしまって。

本作も主人公であるスピリットを無理矢理捕えたカウボーイたち、またインディアンであるリトル・クリークを無理矢理捕えてきた砦(フォート)の白人たちは基本的には悪人側として描かれます。しかし、本作が単純な逆転構造になっている訳ではないことは、フォートの長である大佐を見ればわかります。威厳と実力を兼ね備えた彼の存在が、映画自体を締まったものにしています。

クライマックスの展開なども考えると、やはり基本的には子ども向けに作られたアニメーションであるという感じがします。ただ、上にも書きましたが、大佐を中心として見ると、大人でも楽しめる作品に仕上がっていると感じました。あと、個人的には大佐の造形が非常にジャック・パランスに似ている気がしており、その点も楽しめました。

徐克(1995)『金玉満堂(きんぎょくまんどう)/決戦!炎の料理人』

金玉満堂/THE CHINESE FEAST
製作国:香港
上映時間:106分
監督:徐克
出演:張國榮/袁詠儀/鐘鎭濤/羅家英

日本では『蜀山奇傅・天空の剣』(1984)などアクション映画の監督という印象が強い徐克ですが、実はコメディ映画の監督や、アクション・コメディの製作など、非常に手広く映画制作に携わっていました。本作はそんな徐克監督のロマンチック・コメディです。

 「ワンス・アポン・タイム・イン・チャイナ」シリーズで知られる香港ニュー・ウェーブの旗手ツイ・ハーク監督によるコメディ。とあるレストランを舞台に繰り広げられる料理対決の模様をコミカルに描く。
 主演のレスチー・チャン、アニタ・ユンという魅力的なキャスティングにより、現代的若者の恋愛を全編コミカルに描きつつ、チャンがユンをバイクで連れ去れくだりなど、ふとして所で都会的若者の群像を描き出すかの様なカメラワークはさすが。ユンの無邪気な無鉄砲さも可愛く極めて魅力的。しかし、肝心の料理対決は結局、その恋愛劇にとって付けた様になり、緊張感も迫力もまったく感じさせず退屈。コメディなのだからいつものアクションのように飛んだり回転したりと思い切って派手に演出して欲しかった。

Allcinema Onlineでは料理劇の部分が批判されていますが、本作は基本的にロマンチック・コメディ(だとぼくは思っている)なので、いまいち的外れかと。山口百恵に憧れる黒社会崩れのコック・趙港生(張國榮)と老舗料理店の娘ながら歌手に憧れる歐嘉慧(袁詠儀)の間のラヴ・コメディ。それに、中国一の料理人だったにも関わらず、妻との諍いから落ちぶれることとなった廖杰(鐘鎭濤)とその妻(倪淑君)の関係の修復のロマンチック・コメディ。彼らの間を取り持つものが料理だった、というお話。

香港の料理コメディというと、周星馳の『食神』(1996)が有名ですが、本作は『食神』とは異なり、料理自体は非常に真面目に描かれます。そう言った意味では、こちらのほうが少々地味。ただし、『食神』では周星馳の個人技と荒唐無稽な料理が笑いどころだったのに対し、本作では趙港生と歐嘉慧の関係や、歐嘉慧と父である歐兆豐(羅家英)の関係など、人間関係の中のやり取りで笑わされます。観ていて幸せになれる映画ですね。

チャールズ・F・ライスナー/バスター・キートン(1928)『キートンの蒸気船』

STEAMBOAT BILL JR.
製作国:アメリカ
上映時間:72分
監督:チャールズ・F・ライスナー/バスター・キートン
出演:バスター・キートン/アーネスト・トレンス/マリオン・バイロン/トム・ルイス

キートン長編傑作集というDVDに入っていた作品を、『馬鹿息子』(1920)、『キートンの恋愛三代記』(1923)、『キートンの大学生』(1927)と紹介してきましたが、本作『キートンの蒸気船』でひとまずおしまいになります。印象としては、後期の2作品のほうが、前期のものに比べてかなり面白い。『キートンの大列車追跡』(1926)も併せて、この辺りがキートンの最盛期と言えるのではないでしょうか。

 NYから故郷ミシシッピーに帰り、久しく会わなかった父と再会するキートン。駅に彼を迎えに行く父は、電報で知らせてきた目印のカーネーションを目当てに息子を探すが、この日は母の日で降りてくる男の客の皆、同じ花を胸につけており、肝心の本人は向こう側のホームに降りている--という傑作ギャグから始まる本編は、キートン一流のマッチョを揶揄した痛快アクション満載の喜劇。蒸気船船長の父は自分のように逞しく成長した息子を想像していたが、貧弱で軟派な都会のモダンボーイでガックリ。父の船で助手として働くようになる彼は、父のライバルの船と競走して勝つなど、やがては意外な底力を飄々と発揮してみせることに。後半の暴風雨のスペクタクル・ギャグは語り草になるほどで、三階建ての家が倒壊して下敷きか? と思いきや、その窓の箇所に立っていて難を逃れたり、風に転がる家と戯れたり、コウモリ傘ごと引っ張られ空を舞ったりと、超人的アクションでシュールな笑いを繰り広げる。そしてラスト。大洪水から町の人々を救う大活躍をし、船の甲板で愛しのヒロインがキスを待ち受けているというのに突然、河の中に飛び込むキートン。なんだ、溺れかけていた牧師を救っていたのか--というオチが、全くクールな奴だぜと再び拍手喝采もの。この偉大なダブルテイクを劇場で観る際の反応は感動的なものがありますので、できれば、銀幕でご覧下さい。

序盤の面白さは正直『キートンの大学生』のほうが上回ります。コメディとしてもそこまでは盛り上がらず……と思ってみていたら、後半の暴風雨のシーンはもの凄い。これと同じレベルの暴風雨の描写は幸田露伴の『五重塔』くらい……ってジャンルが違いますが。しかし、そのくらいのもの凄い暴風雨の描写です。

家が吹き飛ばされたり車が飛んでいったりというもの凄い状況のセットの中、(いつものように)突如超人的な活躍を始めるキートンが見物です。キートンの父を演じたアーネスト・トレンスが、頑固な海の男ながら、子供にはどこか甘い親父をを体現しており、なかなか印象に残りました。

ウィシット・サーサナティヤン(2000)『快盗ブラック・タイガー』

FA TALAI JONE/TEARS OF THE BLACK TIGER
上映時間:114分
製作国:タイ
監督:ウィシット・サーサナティヤン
出演:チャッチャイ・ガムーサン/ステラ・マールギー/スパコン・ギッスワーン/エーラワット・ルワンウット

タイ映画というと、『ナンナーク』(1999)が久しぶりにかなりの制作費を掛けて製作された大作、なんていう話を以前聞いたことがありましたが、本作は『ナンナーク』で脚本を務めたウィシット・サーサナティヤンの初監督作品です。公開時には「トムヤムクン・ウエスタン」なんて紹介されていたこともあったので、亜流ウエスタンに分類しています。

 2001年、タイ映画として初めてカンヌ国際映画祭に正式出品されたことでも注目されたエンターテインメント・アクション・コメディ。古典的なメロドラマに西部劇の要素を持ち込み斬新な映像で味付けした楽しい一作。監督はこれまで主にCM界で活躍してきたウィシット・サーサナティヤン。2001年に日本でも公開された「ナンナーク」の脚本を手掛け、本作で待望の監督デビューを果たす。
 太平洋戦争のさなか、裕福な家庭の娘ラムプイは疎開先の家庭で無口な少年ダムと出会う。身分の差を越えて次第に仲良くなる二人だったが、終戦になるとラムプイは実家へと帰っていった。やがて、成長した二人は在籍する大学で運命の再会を果たす。当然のごとく燃え上がる恋。そして、ラムプイとダムは結婚を誓い合う。しかし、久々に戻った故郷でダムは父を何者かに殺されてしまう。ダムは父の仇をとるため盗賊団の一員となる。一方ラムプイのほうは、運命のイタズラか、父親から盗賊団撲滅に執念を燃やすガムジョン警部との結婚を迫られていた……。

メロドラマ風味のウエスタンだと思って見はじめたのですが、ウエスタン風味のメロドラマでした。フィルムを前編に渡ってサイケデリックに着色してみたり、『サボテン・ブラザース』(1986)ばりの書き割りを導入してみたり、マカロニウエスタン(というよりモリコーネ音楽)や古いハリウッド映画のパロディをしてみたりと、色々やりたい放題している割に、ストーリーはおとなしめでした。

ファーイ(ソムバット・メタニー)率いる盗賊団は、「盗賊団」という触れ込みながら、盗賊行為をしている様は描写されません。マカロニ風音楽と共に疾駆するウエスタンスタイルの盗賊団を背景に、新聞記事が出て盗賊団の活躍を伝える、という描写のみ。ただ、銃撃戦はガムヂョン警部(エーラワット・ルワンウット)がファーイのアジトを襲撃する場面、ファーイが知事邸を襲撃する場面の2回あり、それぞれなかなか楽しめます。その他の描写はコミカルなのに、血が噴き出したり、腕が吹っ飛んだりというスプラッタ描写だけ、妙に生々しいのが印象的。

印象に残ったのが、主人公ダム(チャッチャイ・ガムーサン)とコンビの盗賊マヘスワン(スパコン・ギッスワーン)が絡むシーン。ギッスワーンの演技がコミカルなのもあるのですが、演出法なども凝っていて面白いです。特に1回目の二人の決闘シーン、様々なウエスタンの決闘シーンのカメラアングルを模倣しており、かなり楽しめました。

トムヤムクン・ウエスタンというと、『ロケットマン!』(2006)という映画もあるそうなので、機会を見つけて見てみたいです。

レオポルド・サヴォーナ(1967)『キラー・キッド』

KILLER KID
製作国:イタリア
上映時間:102分
監督:レオポルド・サヴォーナ
出演:アンソニー・ステファン/フェルナンド・サンチョ/リズ・バレット/ジョヴァンニ・チアンフリグリア

マカロニ第四のスター、アンソニー・ステファン主演の日本では劇場未公開(TV放映のみ)だったマカロニウエスタン。監督はステファン映画の最高傑作とも言われる『皆殺しのガンファイター/1対30』(1969)の監督・脚本も務めたレオポルド・サヴォーナ。また、本作には『十字架の長い列』(1969)の監督であるセルジオ・ガローネも脚本として参加しています。

メキシコ国境ほど近いアメリカの刑務所から一人の男が脱走します。彼の名はキラー・キッド(アンソニー・ステファン)。名うての殺し屋です。メキシコに逃げ込んだ彼は、革命家エル・サント(ハワード・ネルソン・ルビアン)の部下であるビラール(フェルナンド・サンチョ)と武器の密輸屋が小競り合いをしている場面に遭遇します。ビラールの部下であるパブロを助けたキッドは、彼の案内でエル・サントが隠れ住んでいるアジトに辿り着きます。

エル・サントの信用を得、彼と行動を共にすることにするキッド。エル・サントの信用厚い女性メルセデス(リズ・バレット)とも親しくなっていきます。しかし、キッドには隠された目的がありました。彼の正体はアメリカ軍将校モリソン大尉。実は武器の密輸組織を潰し、密輸された武器を爆破するのが彼の役目だったのでした。

ある夜更け、革命軍の武器を積んだ車が崖から落下。せっかくの武器は爆発・炎上してしまいます。実はモリソンの仕業だったのですが、あくまで彼を信頼するエル・サントと彼を疑うビラールの対立は決定的となります。革命軍を離れるモリソンでしたが、その隙にビラールがエル・サントを襲い軟禁、革命軍の実権を奪います。メルセデスからその知らせを受けたモリソンはビラールからエル・サントを解放。エル・サント、モリソン、ビラール、それぞれの思惑を胸に、大量の武器の横流し取引現場へと彼らは向かうのでした……

レオポルド・サヴォーナ監督の映画の中で、面白さで言うと正直『皆殺しのガンファイター/1対30』には少々劣ります。しかし、メキシコ革命を背景とした(マカロニウエスタンにしては)少々込み入ったストーリーはなかなか面白い。特に、ステファン演じるモリソン大尉の正体が分かるまでは、一体彼が何を目的として動いているのかなかなか分からず、もやもやしたまま見ていくことになります。正体がわかると色々辻褄が合ってすっきり。

共演者に食われる事で一部定評のあるステファンですが、今回は無事に食われてはいません。ただ、無教養ながら惚れた女と革命には一途なビラールの方が、任務のためとは言えスパイ紛いの行動を取っているモリソンに比べると、キャラクターとして筋が通ってかっこいいのは確か。サンチョ史上一二を争う格好いいサンチョではないでしょうか。個人的にはクライマックスでサンチョが主人公側に立って共闘する、という展開も熱いものがあります。サンチョだったので、食われずにすみましたが、これが他の俳優だったら食われてたかも(決してサンチョの演技が下手と言っているわけではありません。サンチョはサンチョなのです)。

1時間半を少し越える、マカロニウエスタンとしては少々長めの作品なのですが、間延びしたところもなく、飽きずに見られる面白い映画でした。

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