製作国:日本
上映時間:84分
監督:野村孝
出演:宍戸錠/小林千登勢/ジェリー藤尾/嵐寛寿郎
野村孝監督、宍戸錠主演の日活アクション。長らくDVDソフト化されず、なかなか見ることができなかったのですが、日活100周年を記念した日活GREAT SERIESでついにDVD化されました。
殺し屋の上村(宍戸錠)は大田原組から依頼され、島津組組長(嵐寛寿郎)の暗殺を請け負う。相棒の塩崎(ジェリー藤尾)と共に首尾よく組長の狙撃に成功した上村でしたが、空港から脱出する直前、島津組に捕われてしまいます。塩崎が車に施しておいた改造のおかげで脱出した2人は、大田原の秘書・金子(本郷淳)の指示で津川組組長(内田朝雄)の息のかかったモーテル・渚館に逃げ込みます。
脱出する機会を伺っていた2人は、渚館のウェイトレスである美奈(小林千登勢)と知り合い、彼女が育ったダルマ船を利用した脱出を思いつきます。しかしそのころ、津川の斡旋で大田原組と島津組は手打ち。邪魔になった上村と塩崎を協力して消そうとするのでした。上村と美奈がダルマ船の船長(山田禅二)に脱出の手助けを依頼しに行っている間に島津組幹部・千崎(江角英明)が渚館を襲撃。塩崎を誘拐し、上村を脅します。塩崎の解放を条件に、上村はたった一人で敵の待つ、埋め立て地へと赴くのでした……というお話。
おそらくそこまでの予算は掛かっていない映画だと思われます(その割に車は派手に破壊したりしていますが)。映像も60年代後半という時期にも関わらず白黒です。しかし、このモノトーンの落ち着いた映像が、宍戸錠の醸し出す殺しのプロフェッショナルの落ち着いた風情にマッチしてなかなか趣があります。
映画としては、前半と終盤の宍戸の殺しのプロフェッショナルぶりを見せるシークエンスと、中盤の、小林千登勢の辛い生い立ち、そして宍戸と小林千登勢の不器用な交流を描くシークエンスに大きく別れます。音楽も、前半と終盤はマカロニウエスタンを思わせるハイテンポで勇壮な音楽が、中盤では哀調を帯びた音楽が使われています。ジェリー藤尾の歌う挿入歌も哀調を帯びて聞かせます。
そして、何と言ってもクライマックスの決闘シーン。たった1人で組員たちに立ち向かう宍戸の姿は非常に西部劇的でリリシズムに溢れています。ただ、組員の人数がちょっと少なかったり、組長たちは秘密兵器の防弾カーに頼り切りだったりと、少々物足りない部分があったのも確かです。