今日こんな映画観た

日本未公開・未ソフト化の超マイナー映画から、誰もが知っている超大作まで、映画についての鑑賞メモ。
基本的にストーリーは結末まで記しているため、ご注意ください。

G:Musical

須川栄三(1964)『君も出世ができる』

製作国:日本
上映時間:100分
監督:須川栄三
出演:フランキー堺/高島忠夫/雪村いづみ/中尾ミエ/浜美枝

ブロードウェイミュージカル「努力しないで出世する方法」に影響されて東宝で企画・制作された珍しい本格的なミュージカル映画。監督は『野獣死すべし』(1959)などで知られる須川栄三が務め、2億円という破格の予算で制作されました。

東京オリンピック開催を控え、頑張り屋の山川(フランキー堺)とマイペース型の中井(高島忠夫)が勤める東和観光も、ライバルの極東観光を押さえて、大口の外国人旅行客を獲得すべく鎬を削っていました。そんなとき、渡米した社長・片岡(益田喜頓)と共に、アメリカに留学していた社長令嬢・陽子(雪村いづみ)が日本に帰ってきて、山川と中井が所属する外人営業部の嘱託となります。

「アメリカでは能率第一」とアメリカ主義の陽子に対し、サラリーマンの出世の秘訣は社長の娘を掴むこと、とばかりにアプローチをかける山川に対し、ぼんやり屋の中井は陽子に怒られてばかり。しかし、意外にも陽子に気に入られたのは中井の方で……というお話。

本格的なミュージカルということで、主題歌でもありフランキー堺のテーマソング的な「君も出世ができる」をはじめ、高島のテーマソングと言える「タクラマカン」、また、雪村の「アメリカでは」など、黛敏郎作曲、谷川俊太郎作詞の印象的な楽曲に合わせて、なかなか豪華なステージが繰り広げられます。その全てが映画的に成功しているとは言いがたいですが、非常に勢いが感じられ、見ていて楽しくなるシーンがかなり多いです。

特に印象的なのが高島と雪村がそれぞれのテーマソングを歌い合うシーン。ロマンティックなシーンでありながら、コミカルでもあり、記憶にある中では今までで一番、映画を見ながら腹を抱えて笑いました。また、クライマックスで植木等がカメオ出演しているのですが、そこからの丸の内でのロケシーンは訳の分からない方向性にゾンビ映画のようなものすごい迫力。これだけでも一見の価値はあります。

ストーリー的には東宝お得意のサラリーマン喜劇をベースとしたものであり、安心して見ていられる娯楽作品です。本作がそこまでヒットしなかったため、東宝では本格的なミュージカル映画がこれ以降作られていないのが残念です。

ところで、主人公2人が勤める東和観光の重役役で藤村有弘が出演しているのですが、彼は日活所属だと思っていたのですが、この時期の東宝映画でもたまに顔を見かけます。移籍したのかな。

杉江敏男(1963)『香港クレージー作戦』

製作国:日本
上映時間:93分
監督:杉江敏男
出演:植木等/ハナ肇/谷啓/浜美枝/淡路恵子

クレージー作戦シリーズ第3作は、前作からぐんとスケールアップして香港を舞台にクレージーキャッツが活躍します。監督の杉江敏男は、クレージー映画では本作と『無責任遊侠伝』(1964)で監督を担当。フィルモグラフィーによると、東宝サラリーマン喜劇を多く撮った監督さんのようです。

 東宝「クレージー」の一作で、初の海外ロケを敢行した作品。駅前の呑兵衛横町が、香港の大企業によって立ち退きを迫られる。そこの常連・植田等は、彼らに代わって企業の社長・汪と交渉し、まんまと香港のビルに店を持つことを了承させる。植田等に率いられた横町の面々は、香港にレストランを開業するが一向に儲からない。仕方なく、彼らは街頭広告に乗り出すが……。同時上映『海底軍艦』。

シリーズ映画では、舞台のスケールは広がってもお話のスケールは広がらなかった……というようなケースも散見されますが、坪島孝監督から杉江敏男監督へと演出が交代した本作は、意外にも(?)杉江監督の演出がピタリとハマり、なかなか面白い映画に仕上がっていました。

香港が舞台ということで、当然ながらクレージーキャッツメンバー以外の人見明、由利徹などのお馴染みの面子が序盤に少し顔を見せる程度なのが少々寂しいところですが、犬塚弘、安田伸、石橋エータロー、桜井センリというこれまでの作品ではそこまでキャラクターが立っているとは言いがたかったメンバーのキャラクターにしっかりと見せ場が作られているのは良かったです。

劇中の大筋ではクレージーキャッツのメンバーは料理人の役どころなのですが、実際にはジャズバンドだったクレージーキャッツを、劇中でもコミックバンドとは言えジャズバンドとして演出するというのは、今までのシリーズ作品ではやらなかったことで、少々禁じ手感もありますが、ストーリーの中に溶け込んでおり、「クレージーキャッツ」というスター映画ならでは、というところですかね。

ところで、昔の香港の風景も楽しく見られましたが、何で彼らはみんな普通話しゃべってるんですかね。

古澤憲吾(1964)『日本一のホラ吹き男』

製作国:日本
上映時間:93分
監督:古沢憲吾
出演:植木等/浜美枝/曽我廼家明蝶/草笛光子

古澤憲吾監督、クレイジーキャッツの植木等主演の「日本一」シリーズの『日本一の色男』(1963)に続く第2作。ヒロインは団令子から、前作にも出演していた浜美枝に変わっています。

 東宝“クレージー”の一作で、植木等をメインにフィーチャーした「日本一の男」もの第二弾。大言壮語はするが、言ったことはどんな手段を使っても必ずやり遂げるというキャラクターを決定付けた作品。オリンピック選手の有力候補だった初等(はじめひとし)は、アキレス腱を切る事故で夢が断念されてしまう。だが彼は、先祖の一代記に大ボラを吹いて成功したという記述を読んで勇気づけられる。早速、増益電器に潜り込んだ彼は、さまざまな手段で異例のスピード出世を果たしていく……。

物語は初等の大学4年生から始まります……ということは、前作や、前身となる『ニッポン無責任時代』(1962)や『ニッポン無責任野郎』(1962)に比べると植木等の役どころの年齢設定は少々下になるようです……といっても、とても学校出たての新人には見えませんが(笑) 見た目も度胸も。

『日本一の色男』では、植木等の役柄は、まだそれ以前の2作の雰囲気を残したキャラクター設定でしたが、本作では「無責任」の影はまったくなくなり、大言壮語しながら、その「ホラ」を実現するためには全力で頑張る、というキャラクター造形がされています。まぁ、どちらにしろ、植木等という完璧に陽性のキャラクターが演じているので、カラッと面白い物語に仕上がっています。

前作はシリーズ中でも少々ほろ苦いラストになっていましたが、本作は王道というか、このシリーズらしい終わりかたになっており、見終わったあとも爽やかな気分になれます。本作は確か植木等が亡くなった際にも、地上波で久しぶりに放映された記憶がありますね。

古澤憲吾(1963)『日本一の色男』

製作国:日本
上映時間:93分
監督:古澤憲吾
出演:植木等/団令子/草笛光子/白川由美

ニッポン無責任野郎』(1963)に引き続き、古澤憲吾監督、植木等主演のコンビで撮られたクレージー映画。一応「無責任シリーズ」は前作までで終わりで、本作以降は「日本一シリーズ」という形で製作されているようで、植木等演じる主人公のキャラクターも、前作までとは少し違う性格になっています。

 東宝クレージー作品の一作で、植木等をメインにした通称「日本一の男」シリーズの第一弾。ワルノリのし過ぎで女学校をクビになった光等は、ローズ化粧品にセールスマンとして雇われる。舌先三寸で顧客を丸め込み、彼は次第に日本一のセールスマンになっていく……。『海底軍艦』の藤山陽子が、植木等の恋人役で出演。

植木等演じる源等は化粧品のセールスに行く先々で、あの手この手の口先三寸で化粧品を売りつけて行きますが、本作ではそれと同時に、『日本一の色男』のタイトル通りバーのママ、銀座の芸者、生命保険会社社長の二号さん、ビューティースクールの女社長(それぞれ草笛光子、淡路恵子などといった、当時の東宝映画の売れっ子女優が演じています)といった大口顧客にモテまくります。

一方、本作の源等というキャラクターは映画冒頭で、とある目的のために勤めていた学校を馘になるような行動をとったり、何やら懐から取り出してはたまに拝んでいたりと、前作までとは異なり何やら目的があって金を貯めていることを匂わせる描写がされています。等の目的については映画の最後に明かされますが、これがまた、少々哀愁を漂わせる、いいオチになっていました。

上記のような理由もあり、一応キャストとしては前作に引き続き団令子が2番目にキャスティングされているものの、ヒロインとしての役割が草笛光子や淡路恵子にも分散しているため、あまり個々の女優陣の印象は強くない映画ですね。

孫瑜(1935)『大路』

The Big Road
製作国:中国
上映時間:104分
監督:孫瑜
出演:金焰/陳燕燕/黎莉莉/張翼/章志直/羅朋

中国では1905年に初めて映画が撮影されましたが、1920年代後半から1930年代にかけて、上海を中心に最初の隆盛期を迎えます。この時期の代表的な作品のひとつが本作『大路』です。この時期の作品にはいわゆる左翼的な作品が多いのですが、本作もその一本であり、孫瑜も左派映画人の一人です。この時期、大手映画スタジオの支配を巡り、共産党と国民党は鎬を削っていました。

道路工事の人夫である金哥(金焰)、老張(張翼)、章大(章志直)、鄭君(鄭君里)、小羅(羅朋)の5人はそれぞれ違った性格ながら気の合う仲間でした。しかしある日、短気な章大が仕事中に問題を起こし、5人とも馘になってしまいます。街でこれからのことを思い悩んでいた5人は、食い詰めて泥棒をして逃げている韓小六子(韓蘭根)を見かけ、彼を助けてあげるのでした。

金哥の発案で、内地に行ってまた道路工事の人夫をやることにした5人に韓小六子を加えた6人、人望のある金哥の提案に、その他の仲間たちも乗ってきて、彼らは中国中を道を作って回ります。ある時、彼ら6人は近くの食堂の2人の娘、丁香(陳燕燕)と茉莉(黎莉莉)と親しくなります。

一方、敵国との戦争は彼らが作っている道のすぐ先まで迫っていました。敵国から賄賂をもらい、道路工事を中止させようとする地主の胡旦那(尚冠武)でしたが、6人は彼を売国奴だと言い、言うことを聞きません。そんな6人は胡に捕えられ、井戸の中に閉じ込められてしまうのでした。

拷問を受けても工事を辞めることに同意しない6人。一方、彼らが胡旦那に捕えられたことに気づいた丁香と茉莉は、知恵を絞って6人を助け出すことに成功します。そして、無事に道を作り終えた彼らでしたが、そこに敵国の飛行機が爆撃をしかけにやってくるのでした……というお話。

本作は半分トーキー半分無声映画のような作りで、現在の中華人民共和国国家の作曲者である聶耳による「大路歌」「開路先鋒歌」といった人夫たちが路を作りながら合唱する歌や、効果音、ピストルの音などは音が入っていますが、登場人物の台詞は音声ではなく、字幕で表示されます。

今の目で見ると、少々テンポがゆっくり目である印象も受けますが、6人のキャラクターの描き分けや、コミカルなシーンの演出、丁香と茉莉が6人を助け出すシーンの知略や活劇など、エンターテインメントとしてもしっかりした作りの映画です。

今回、中国で発売されたDVDで見たのですが、このDVDではパッケージ裏の解説に、「全国民众奋起抗日(国中の民衆が奮い立って日本に抵抗した)」と、明確に敵国が日本であるかのように書いていますが、映画中では(当時の情勢からまぁ間違いなく日本を想定してはいるのでしょうが)「敵国」との表記がされるだけで、明確には描かれません。地主の家によく見ると日本国旗に見えなくもないものが置いてはあるんですが、白黒ですし、暗いのでわかりません。

そのため、日本人(というか日本人の一人であるぼく)としても、ひとつの戦争を描いた作品として楽しんで見られますし、その辺りが映画の出来も高めているように思えます。その辺が共産党政権になってからの「抗日映画」とは大きな違いでしょうね。

最後に、茉莉を演じた黎莉莉は今回初めて見た女優さんですが、とてもきれいな女優さんでした。

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