La belva
製作国:イタリア
監督:マリオ・コスタ
出演:クラウス・キンスキー/ジュゼッペ・カルディーロ(スティーヴン・テッド)/ガブリエラ・ジョルジェーリ/パオロ・カセーラ(ポール・サリヴァン)
【あらすじ】
クレイジー・ジョニーの通称を持つジョニー(クラウス・キンスキー)は、ある日町の酒場でオーナーのボーエンズ(グイド・ロロブリジーダ)から声を掛けられる。地所を売払い引退する町の名士パワーズ氏(アントニオ・アネッリ)を襲い、彼が受け取った10万ドルを強奪しようと言うのだ。彼らは帰り道でパワーズ氏を襲い、撃ち殺すが、10万ドルはすでに銀行に預けられたあとだった。しかもボーエンズが殺害現場に嗅ぎたばこ入れを落としてしまう。保安官(レモ・カピターニ)から疑いを掛けられたボーエンズをジョニーは撃ち殺し、町から姿を消した。
メキシコの酒場。ジョニーは旧知のメキシコ人グレン(パオロ・カセーラ)からリカルド(ジュゼッペ・カルディーロ)とホワニータ(ガブリエラ・ジョルジェーリ)のカップルを紹介される。彼らと組んで、銀行に預けられた10万ドルを奪い取ろうと言うのだ。折しもパワーズ氏の娘ナンシー(ルイーサ・リヴェッリ)が遺産を相続するため、町に向かっていた。ジョニーの作戦は、ホワニータがナンシーと入れ替わり、遺産を横取りしようというものだった。
計画は当たり、リカルドとホワニータはダラスの銀行に入っている分を除いた5万ドルを手にするが、ここで間違いが起こる。ジョニーがナンシーをレイプしようとし、逃げた彼女を射殺してしまったのである。この事件をきっかけにジョニーとリカルド達3人は袂を別つこととし、3人はジョニーに分前の1万2千ドルを渡し、追放する。
とある町に流れ着いたジョニーだったが、ここで追っ手に見つかってしまう。自分がお尋ね者であると知った彼は、グレンから残りの金を奪おうとメキシコにやってくるが、山賊のマシェティ(ジョヴァンニ・パラヴィシーノ)一味に捕らえられる。ジョニーは彼らと取引をし、ホワニータをさらわせる。
ホワニータがマシェティ一味にさらわれたことを知ったリカルドはグレンや仲間たちを集めてアジトを襲撃するが、ジョニーとホワニータはすでに逃げたあとだった。ジョニーを追うリカルドとグレン。一方のジョニーはホワニータから残りの金の隠し場所を聴きだすと彼女を殺し、隠し場所であるリカルドの養父の牧場に向かおうとする。しかし、ジョニーは先回りしていたリカルドに殺されるのだった。
牧場に戻ったリカルドだったが、そこはすでにマシェティ一味によって略奪を受けている真っ最中だった。マシェティを撃ち殺したリカルドだったが、金は焼け、養父母や義弟をも失った彼は、ただ立ち尽くすのだった。
【感想】
ストーリーだけ見ればそれなりに悪くなく、入れ替わりの犯行計画などなかなか面白い趣向も凝らされています。ただ、主人公がジョニーなのかリカルドなのかいまいち判然としません。リカルドに焦点をしぼり、犯行計画に乗るなど欠点はあるものの、それが原因で全てを失う人物として描けば、それなりの作品になった気がします。が、本作ではキンスキー演じるジョニーにかなりの比重が置かれており、また彼がただただ性欲だけで動いているような異常な人物で、これがまた如何ともしがたい。まあそれが、本作を本作たらしめている要因ではあるのですが。
このジョニーという人物、クレイジー・ジョニーというあだ名で呼ばれているだけのことはあり、綺麗な女を見ると、後先を考えず、見境なく襲おうとする異常な人物。衝動的で、ただただ本能にしたがって生きているような人間です。ただ、一方で単純なところもあり、ナンシーに言いくるめられて、ニコニコと別室で洋服を脱いでいる間に逃げられるなど、何というか、そういう人物です。
このジョニーのキャラクターが良くも悪くも強烈なため、ストーリー的には主人公的な立ち位置にいるリカルドの影が非常に薄くなってしまっているのが、バランスの悪いところ。ステルビオ・チプリアーニの音楽はなかなか悪くないんですが。
マカロニウエスタンにしては緑が目立つ本作ですが、スペインではなくイタリアのローマ近郊及びローマにあったエリオス・スタジオで撮影されたようです。