製作国:日本
上映時間:78分
監督:田坂具隆
出演:小杉勇/見明凡太朗/伊沢一郎/井染四郎/長尾敏之助
田坂具隆監督というと、ぼくの中では戦後の日活映画製作再開期の『陽のあたる坂道』(1958)などの文芸路線の映画や、以前もご紹介した『五番町夕霧楼』(1963)のイメージが強いのですが、本作は日中戦争期に国策の一環として撮られながらも、迫真的なリアリズムが高く評価され、第6回ヴェネチア国際映画祭で民衆文化大臣賞を受賞した戦争映画です。
田坂具隆が原作(高重屋四郎名義)と監督を務めた戦争ドラマ。荒牧芳郎が脚本を担当した。国策に沿って製作された戦争高揚映画だが、カメラワークと、ヒューマニスティックな視点とが評価された。
激戦を乗り越えた岡田部隊のもとに、本隊から敵陣の偵察命令が下った。部隊長の岡田は五人の兵士からなる斥候隊を組織し、敵の情報収集に向かわせた。五人は川の対岸に数多くの中国兵とトーチカなどを発見、部隊に戻ることにした。しかしすでに彼らは敵の部隊に取り囲まれていた。機銃掃射を受けながらも、五人はそれぞれその場を離れた。一人また一人と兵士たちが帰還したが、木口一等兵だけが戻らない。そんな中、本部から明朝敵陣を占拠せよという命令が下った。
田坂具隆監督と戦争映画、というのがいまいちピンと来なかったのですが、本作を見てみて納得できました。本作は一応戦闘シーンもあるものの、あくまで物語の中心となるのは、小杉勇演じる岡田部隊長を理想化された「父」として描かれた理想的な疑似家族的な軍隊という集団です。
上映時間のほとんどを占めるのは、占領した拠点(『独立愚連隊』(1959)に登場した拠点を想像するとだいたいそんな感じ)を部隊にした、軍部隊の日常風景。兵たちによる歩哨や飯炊き、その中での戦友同士の他愛のない会話が多くを占めています。ユーモアのある台詞も多く、本体から支給された煙草をバットから吸うかほまれから吸うか、といった言い合いのシーンなど印象に残るシーンも多い。
明らかに戦意高揚目的で撮られた映画ではありますが、今見ても面白さの感じられる作品となっていました。