製作国: 日本
監督: 野口博志
出演: 赤木圭一郎/芦田伸介/笹森礼子/水島道太郎
【あらすじ】
幼い頃両親を失った野上(赤木圭一郎)は鬼島(水島道太郎)に拾われてチンピラとして育てられた。鬼島率いる列車強盗団に参加した野上は、逃げようとする機関士助手を撃ち殺してしまう。一方、移動養蜂隊を率いる山善(芦田伸介)は越中八尾駅に孫娘の十美(笹森礼子)を迎えに来ていた。二人は幌馬車で養蜂隊に帰る途中、銃で撃たれて重傷を負っている野上を見つける。
山善の介抱によって回復した野上は、成り行き上養蜂隊と共に旅をすることになる。自分の正体を知ってもなお、自分を信じる山善に恩を感じ、だんだんと十美に惹かれて行く野上。十美も野上を憎からず思っていた。しかし、鬼島の一味であるマサ(郷鍈治)とサブ(鹿島貞夫)が野上を見つけ、自分たちも養蜂隊に潜り込もうとする。野上は十美を襲おうとするマサを殴り飛ばし、出て行くように告げるのだった。
休日、野上が十美と町にデートに出かけていると、鬼島の手下のトム(武藤章生)が野上を呼び出しにくる。鬼島の隠れ家に赴き、一味を抜けたいと告げる野上。マサは野上を殺そうとするが、山善の情婦あけみ(楠侑子)が野上をかばうのだった。それを見て、何かを思いついた様子の鬼島。
翌日、鬼島の一味が養蜂隊の元にやってくる。野上に様子を探らせていたが、養蜂隊の居心地が良さそうなので一緒に逃げさせてもらう、と告げる鬼島。当然反発する養蜂隊の一行だったが、岸本(待田京介)がマサに撃ち殺されそうになるのを庇うため、野上が岸本を殴り飛ばすのを見て、十美は野上に不信感を持つ。一行は鬼島指揮のもと蜂にとっては過酷な行程を無理強いされる。それでも野上を信じようとする山善だったが、逃げようとした弥作(大町文夫)をマサが射殺、反撃に出ようとした彼から野上が猟銃を奪ったことで、野上を信じたことを後悔する。
その夜、野上は自分の命と引き換えに産気づいた妙子(堀恭子)をはじめとする養蜂隊のメンバーを解放するよう鬼島に迫るが、逆に鬼島たちからリンチにあう。野上を疑ったことを詫びつつ、彼を介抱する山善たち。翌朝、鬼島たちの隙をついて野上と十美は幌馬車で妙子たちを逃す。マサがそれを追うが、野上に捕えられる。一方鬼島は山善たちを人質にしようとするが、そこへ警官隊が来襲。山善たちを連れ、洞窟へと逃げ込む。
人質を取られた警官隊は洞窟へ踏み込むことを躊躇するが、そこへ戻って来た野上が警官隊の制止を振り切って洞窟へと入る。銃撃戦の末、あけみは野上を庇って鬼島に撃ち殺される。今際の際に機関士助手を殺したのは実は鬼島だ、と告げるあけみ。追い詰められた鬼島はトムを囮に野上を殺そうとするが、囮にされたトムの逆襲に遭い、谷底へと落ちてゆくのだった……
待っていると告げる十美に、母の形見の帯留めを託し、野上は警官隊に連行されてゆくのだった。
【感想】
「拳銃無頼帖」シリーズで赤木圭一郎と宍戸錠の名コンビを生み出すことになる野口博志監督が、その直前に赤木圭一郎主演で作った和製西部劇のようなもの。鬼島のファッションや、荒野に擬した立山山麓の高原でのアクションなど、西部劇の影響はたぶんに受けているものの、まだ「拳銃無頼帖」ほどはっちゃけていないというか、善人は銃で人を殺さない、という日本の法令の範囲内で物語を構成しているため、銃撃シーンにはそこまでの迫力はありません。実際劇中で赤木圭一郎は一人も撃ち殺していませんし。
悪人に拾われた主人公が土地の人と出会い、改心して元々の親玉と敵対し、最後にはさって行くという構成は西部劇の影響を色濃く感じますし、この構成はその後の「拳銃無頼帖」シリーズにもほぼそのまま引き継がれます。一方、本作には宍戸錠のような赤木圭一郎のカウンターパートとなるキャラクターが欠けているという印象。宍戸の実弟である郷鍈治は出演していますが、彼はやっぱり宍戸ほどの魅力というか、陽性のキャラクターではないので、そこまでの存在感はありません。
また、本作はこの時代によくあった、観光地とのタイアップ映画という側面もあり、本作では氷見市や立山連峰が主にフィーチャーされていますが、その辺も無国籍アクション感を薄めている要因かもしれません。とはいえ、「拳銃無頼帖」シリーズも2作目以降はタイアップ映画の面もあったので、それだけが理由ではないと思いますが。