製作国:イタリア/スペイン
上映時間:97分
監督:ジョルジオ・ステガーニ・カゾラーティ
出演:アンソニー・ステファン/エドゥアルド・ファヤルド/シルヴィア・ソーラー/ヴィダル・モリナ
久しぶりに日本未公開・未ソフト化のマカロニウエスタンをご紹介します。監督のジョージ・フィンレイことジョルジオ・ステガーニは日本公開作としては『続・さすらいの一匹狼』(1965)や『風の無法者』(1967)が知られている監督。主演のアンソニー・ステファンは今更紹介するまでもないマカロニウエスタンのスター俳優です。敵役のエドゥアルド・ファヤルドは『皆殺しのガンファイター』(1969)でもステファンの敵役を演じていますね。
米墨の国境未確定地域にある街ダグラス。その町からリーヴス大尉(ヴィダル・モリナ)を除いた米騎兵隊が撤退してしまうと、フェレラス大佐(エデゥアルド・ファヤルド)をリーダーとするならず者一味が町の支配に乗り出します。そんなところに一人の流れ者・ジョー(アンソニー・ステファン)がやってきます。ポーカーのいかさまが切欠でフェレラス一味と諍いになるジョーでしたが、リーヴスは町の帰属が決まるまで、いざこざは許さないと言い渡します。実はジョーとリーヴスは旧知の間柄だったのです。
その夜、フェレラス一味がリーヴスの事務所を襲い、町を支配する権利を譲り渡すよう拷問に掛けます。ジョーは敵の隙を突き、リーヴスを助け出しますが、彼は隠れ家で死んでしまいます。ジョーはリーヴスの仇を討つため、彼の変装をし、物陰に隠れながらフェレラス一味の手下を一人また一人と葬ってゆきます。
一方、ダグラスの銀行家モリソン氏は銀行の資金をエル・パソに移そうとしますが、その途中をフェレラス一味に待ち伏せされ、金を奪われてしまいます。ジョーはその金を利用し、フェレラス一味を仲間割れさせることに成功しますが、彼の存在がフェレラスにばれ、捕らえられてしまいます。テキーラを3瓶無理やり飲まされ、バーの地下室に監禁されていた彼を助けたのはバーの踊り子であるヴィッキー(シルヴィア・ソーラー)でした。
ジョーを逃したことからヴィッキーは町の中心に吊るされてしまいますが、ジョーは彼女を吊るしている縄を撃ち、彼女を助け出します。しかし、家の2階から地面に飛び降りた際、拳銃を落としてしまい、フェレラス一味に捕まったジョーは、町の中心で見せしめのための銃殺刑に掛けられようとするのですが……というお話。
たいていちょっとした無精髭を生やして画面に現れるアンソニー・ステファンですが、本作の役どころは「ジェントルマン・ジョー」という、賭博師ということもあり、本作ではツルツルのあごをして白づくめの服装で画面に登場するので非常に新鮮。髭が生えてないステファンもやっぱりスラッとしていて格好いい。まぁ、その後は騎兵隊の紛争をしたり、黒っぽい上着を着ていたりといつものステファンっぽい格好になりますが、髭は最後までツルツルです。
本作は、町にふらっとやってくる流れ者、前半から中盤にかけてのスムーズな展開、中盤で悪役に捕らえられて私刑に掛けられる主人公、といった基本的にはよくあるマカロニウエスタン的なストーリーテリングに則っていながら、要所要所でセオリーを微妙に外してくるなかなかの異色作。とくにクライマックスの決着のつけ方は、ある意味で『殺しが静かにやって来る』(1968)レベルの衝撃的な展開というか、マカロニウエスタンでそういう決着のつけ方ってありなんだ……と少々唖然とする結末でした。拍子抜けとも言う。
今回は『アリゾナ無宿・レッドリバーの決闘』(1970)同様、韓国で発売された日本語字幕付きのDVDソフトで視聴したのですが、これは映像はフランス版、音声はイタリア語というちょっと不思議な組み合わせの素材が使われていました。また、ところどころ音声に抜けがみられます。また、映画冒頭、日本語タイトルとして(だと思う)「荒野の口笛奏者」という字幕が表示されるんですが、本作がそのタイトルで上映・放送された形跡は見られないし、おそらくそんな邦題のマカロニウエスタンも存在しないし、何のミスなんでしょう。これを除いても、日本語字幕の質は『アリゾナ無宿・レッドリバーの決闘』のほうが良かったです。