製作国:日本
上映時間:100分
監督:須川栄三
出演:フランキー堺/高島忠夫/雪村いづみ/中尾ミエ/浜美枝
ブロードウェイミュージカル「努力しないで出世する方法」に影響されて東宝で企画・制作された珍しい本格的なミュージカル映画。監督は『野獣死すべし』(1959)などで知られる須川栄三が務め、2億円という破格の予算で制作されました。
東京オリンピック開催を控え、頑張り屋の山川(フランキー堺)とマイペース型の中井(高島忠夫)が勤める東和観光も、ライバルの極東観光を押さえて、大口の外国人旅行客を獲得すべく鎬を削っていました。そんなとき、渡米した社長・片岡(益田喜頓)と共に、アメリカに留学していた社長令嬢・陽子(雪村いづみ)が日本に帰ってきて、山川と中井が所属する外人営業部の嘱託となります。
「アメリカでは能率第一」とアメリカ主義の陽子に対し、サラリーマンの出世の秘訣は社長の娘を掴むこと、とばかりにアプローチをかける山川に対し、ぼんやり屋の中井は陽子に怒られてばかり。しかし、意外にも陽子に気に入られたのは中井の方で……というお話。
本格的なミュージカルということで、主題歌でもありフランキー堺のテーマソング的な「君も出世ができる」をはじめ、高島のテーマソングと言える「タクラマカン」、また、雪村の「アメリカでは」など、黛敏郎作曲、谷川俊太郎作詞の印象的な楽曲に合わせて、なかなか豪華なステージが繰り広げられます。その全てが映画的に成功しているとは言いがたいですが、非常に勢いが感じられ、見ていて楽しくなるシーンがかなり多いです。
特に印象的なのが高島と雪村がそれぞれのテーマソングを歌い合うシーン。ロマンティックなシーンでありながら、コミカルでもあり、記憶にある中では今までで一番、映画を見ながら腹を抱えて笑いました。また、クライマックスで植木等がカメオ出演しているのですが、そこからの丸の内でのロケシーンは訳の分からない方向性にゾンビ映画のようなものすごい迫力。これだけでも一見の価値はあります。
ストーリー的には東宝お得意のサラリーマン喜劇をベースとしたものであり、安心して見ていられる娯楽作品です。本作がそこまでヒットしなかったため、東宝では本格的なミュージカル映画がこれ以降作られていないのが残念です。
ところで、主人公2人が勤める東和観光の重役役で藤村有弘が出演しているのですが、彼は日活所属だと思っていたのですが、この時期の東宝映画でもたまに顔を見かけます。移籍したのかな。