製作国: 日本
監督: 斎藤武市
出演: 赤木圭一郎/小高雄二/笹森礼子/轟夕起子/大坂志郎
【あらすじ】
裸一貫から横浜港の荷役を扱う長岡企業の社長まで上り詰めた康三郎(小沢栄太郎)。彼には秀才の長男・健一(小高雄二)と、まだ学生だが荷役を担う沖仲仕たちと親しく付き合う少々荒っぽい次男・英二(赤木圭一郎)がいた。
ある日、彼は健一に2千万の手形を任せるが、彼がパクリ屋に騙されて手形を奪われてしまう。翌日、康三郎の元に手形を手に入れたという三田村(藤村有弘)から電話が掛かってくる。指定された料亭に向かった康三郎だったが、酒に薬を入れられ、挙げ句の果てには心臓麻痺に偽装されて殺されてしまう。
数日後の株主会議では健一が新社長に選ばれるが、水原(大坂志郎)という男が手形を持って現れ、強引に専務に就任してしまう。水原は沖仲仕たちの労働環境を顧みない、利益重視の経営を行う。沖仲仕たちの間に不満が高まっていたある日、英二とも仲が良かった政吉(杉山俊夫)が梯子を踏み外して転落死してしまう。
沖仲仕たちに懇請された英二は、水原を追い出すよう健一を説得するが、それには2千万の金が要る。健一は持参金を目当てに従妹の美枝(笹森礼子)と結婚しようとする。当初は賛成していた英二だったが、健一と関係のあった秘書・加奈子(白木マリ)から彼の狙いを聞き、健一を諌める。兄弟喧嘩のさなか、健一は英二に彼の出生の秘密をバラしてしまう。英二は実は康三郎の妻・時子(轟夕起子)の実子ではなく、キャバレーのママを務める妾の子だったのだ。家を飛び出す英二。彼は深夜、美枝の部屋に忍び込むと、彼女に健一との結婚を思い止まるよう忠告し、彼女への恋心を明かして去るのだった。
翌朝、英二の姿はドヤの風太郎たちの中にあった。風太郎の平太(西村晃)と親しくなった英二は、彼らと一緒に日雇いとして長岡企業の船に潜り込む。平太の助力もあって、手形事件の実行犯は松井組の身内だと明らかになる。そんなある日、騙された健一が危険なペトロリウムの仕事を請け負ってしまう。遂にストを起こす沖仲仕たちだったが、英二の機転と男気で、健一に協力し、危険な仕事を受けてくれることになる。
一方、英二の実母であるキャバレー・スタンキーのママが2千万を融通してくれることになり、健一はスタンキーに向かう。しかし、それを知った水原と松井組によって、2千万を受け取った直後拉致されてしまう。それを知った英二は水原を脅し、健一の監禁場所を吐かせる。英二は平太をはじめとする風太郎仲間とともに松井組の立てこもる倉庫を襲撃し、健一を助け出し、兄弟の絆を再確認するのだった。
松井組と水原は逮捕されたが、彼らに金を出していたのは、かつて康三郎に世話になった同業者の馬場(三島雅夫)だった。英二と健一は馬場企業に乗り込むが、水原の自白によって馬場も逮捕される。スタンキーに向かった英二だったが、ママはすでに故郷の福岡に帰ってしまった後だった……
【感想】
時間的に『幌馬車は行く』(1960)の後、『拳銃無頼帖 明日なき男』(1960)の前に撮影されているようなのですが、赤木圭一郎はこの時期には珍しい、まだ大学生の身分を演じています。と言っても、まだ実年齢は二十歳そこそこなので、大学生にぴったりの年齢ではあるのですが。影を背負っていることの多いこの時期の他作品と比べると、出生の秘密はあるものの、基本的には屈託のないキャラクターという印象。
「拳銃無頼帖」シリーズも、赤木と宍戸錠の関係性に重点が置かれ(この辺はシリーズの後の作品ほど顕著)、ヒロインはあくまで添え物、という印象が強いのですが、本作もそういった傾向が強く、赤木と小高雄二の関係性が修復に向かい始めるクライマックスになると、完全に笹森礼子は置いてきぼりにされ、自分の気持ちが分からない、と言ってフェードアウトしていった彼女の問題は映画の最後まで解決されません。
白木マリはこの時期の日活にはよくあるお色気担当ではありつつも、珍しく堅い会社員であり、健一のことも心配はしている、という善人の役柄。また、「拳銃無頼帖」シリーズでは頼りなくてしょっちゅう殺されている杉山俊夫は、本作のような陽気なキャラクターが意外と似合うのは発見でした。