Africa United
製作国:イギリス/南アフリカ/ルワンダ
上映時間:88分
監督:デブス・カードナー・パターソン
出演:Eriya Ndayambaje/Roger Jean Nsengiyumva/Sanyu Joanita Kintu/Yves Dusenge/Sherrie Silver
2013年5月17日から23日までオーディトリウム渋谷でCinema Africa 2013という、アフリカ映画の特集上映が行われました。開催を知ったのが最終日の2日前だったので、見たい映画をすべて見るというわけにはいきませんでしたが(『アフリカ・パラダイス』(2006)が見られなかったのが非常に残念)、3本の映画を見てきました。本作、『アフリカ・ユナイテッド』はそのうちの一本です。IMDbでは2010年制作となっていますが、Cinema Africa 2013パンフレットには2008年制作と記載されており、そちらを採用しました。
ルワンダに住むサッカー少年ファブリズ (Roger Jean Nsengiyumva) は、たまたま村を通りかかったW杯南アフリカ大会の開会式に出演する子供たちの取りまとめをしているバクの目に留まり、キガリで行われる選考会に出るように勧められます。教育ママの目を盗み、友人であり「監督」であるドゥドゥ (Eriya Ndayambaje)、ドゥドゥの妹ベアトリス (Sherrie Silver) と共にキガリ行きのバスにこっそりと無賃乗車をします。
しかし、そのバスの行き先はキガリではなく、何と隣国のコンゴ民主共和国。路頭に迷った3人は難民キャンプに連れて行かれてしまいます。そこで出会った元少年兵のフォアマン・ジョージ (Yves Dusenge) の手助けによって難民キャンプからの脱走に成功した4人は、開会式に出るため、コンゴからはるばる南アフリカのヨハネスブルグを目指すことに。
途中ブルンジで売春婦のセレステ (Sanyu Joanita Kintu) も仲間に加わり、トラックやフェリーに乗せて貰ったり忍び込んだりして、南アを目指す彼らでしたが、ジョージを追う民兵やサバンナの野生生物に追い回され、様々な困難に巻き込まれてしまいます。さらにドゥドゥにはある秘密が……。果たして「チーム」は無事にヨハネスブルグにたどり着けるのでしょうか、というお話。
本作はルワンダ、コンゴ、タンザニア、ジンバブエ、南アフリカなど、アフリカ中南部の様々な国を舞台にしたロードムービー。どこまで各地域で実際のロケをしたのか分かりませんが、ルワンダの村、タンガニーカ湖、タンザニアのジャングル、サバンナ、ヨハネスブルグの都会などが登場し、アフリカにも様々な景色がある、という当然のことを思い出させてくれます。
オープニング、ドゥドゥがいきなりコンドームを使ったサッカーボールの作り方を説明しながら、エイズ防止の啓発を始めるのには面食らいましたが、少々無理やりながらもそれが映画の導入につながっており、映画的にも無理のない構成。少年兵の存在、未だに社会の上の階層として存在する白人、エイズ検査、貧困など「いわゆるアフリカ的な」問題にも触れながらも、基本的にはファンタジーテイスト溢れるエンターテインメント映画になっています。
南アフリカを目指すドゥドゥたち一行の物語と、その中でドゥドゥが仲間たちに話す自作の神話(なんと人形芝居で表現される)がシンクロする構造の映画なのですが、何となくエイモス・チュツオーラの小説を連想する部分もありました。人形芝居に出て来た太陽の神様は何とも言えない味があったなぁ……
監督がイギリス人女性監督ということもあり、今回Cinema Africa 2013で見た他の映画とは異なり、いわゆる外から見たアフリカという視点になっていると感じる部分もあります。また、啓蒙的な映画という側面も感じられます。その一方で、アフリカ初のW杯が行われるという盛り上がりや、恐らく実際のW杯で撮影されたのであろうクライマックスは迫力に溢れています。
映画中、恐らくスワヒリ語と思われる歌をみんなで口ずさむシーン以外は彼らはほとんど英語を話すのですが、部族言語が入り乱れているアフリカで、さらに彼らが通る国はルワンダから南アまで、コンゴ以外はすべて英語を公用語としている国家ということを考えると、映画内での設定というより、実際にそういう言語環境なのだろうなぁ、と思わされます。