今日こんな映画観た

日本未公開・未ソフト化の超マイナー映画から、誰もが知っている超大作まで、映画についての鑑賞メモ。
基本的にストーリーは結末まで記しているため、ご注意ください。

1910s

D・W・グリフィス(1919)『散り行く花』

Broken Blossoms or The Yellow Man and the Girl
製作国:アメリカ
上映時間:90分
監督:D・W・グリフィス
出演:リチャード・バーセルメス/リリアン・ギッシュ/ドナルド・クリスプ

D・W・グリフィスといえば『國民の創生』(1915)や『イントレランス』(1916)などで知られる映画黎明期の偉大な監督ですが、本作もその悲劇的なストーリーとともにリリアン・ギッシュの美しさが印象にのこる作品です。

 絶対的ロリコンのグリフィスが永遠の少女リリアンに、究極の乙女を演じさせる。ここで彼女の被る苦難は、元プロボクサーの父による虐待。彼の他の大作のヒロインほど大仰な悲運ではないだけに、その逃れられなさは絶望的。名優クリスプがまた、この希代の憎まれ役に入魂の演技を見せるので、観客の誰もがうすうす、死の他に彼女を解放する手段がないことを予感する。その彼女に想いを寄せるのがバーセルメスの純真な中国商人。本来なら異様な、白人の東洋人への化身も、このバーセルメスにだけは許される。そんな真摯さに溢れた演技で、リリアンと清らかな愛を紡いでいく。後にゴダールによって「勝手にしやがれ」で引用されるラスト・シーンが美しい。瞳は悲しみを湛えているのに、リリアンはその白魚の指で口の端を上向きに歪ませて、最後の微笑を作るのである。

絶対的ロリコンのグリフィスとはこれまたすごい解説…… まぁ、そう書かれてしまうのもうなずけるほど、化粧や照明を駆使してギッシュのはかなげな美しさを際立たせようとして本作は撮影されています(一方でその照明技術はギッシュの父を演じるクリスプの恐ろしさをも際立たせています)。

中国人である主人公を白人であるリチャード・バーセルメスが演じているのは、やはり同じ東洋人であるぼくから見るとかなり不自然な印象を受けますが、当時のアメリカ映画界を考えるとこのあたりは仕方のないところでしょう。むしろ、バーセルメスの(一種ステロタイプとはいえ)東洋人らしい抑制の取れた立ち振る舞いの演技と、感情が爆発した際の演技が見どころのひとつと言えます。

ところで、主人公に助けられたルーシー(ギッシュ)すら彼の名前を尋ねず、彼はただただ The Yellow Man あるいは Chink、Chinky としか呼ばれないのには当時の状況、雰囲気を感じさせられます。

仏教の平和の教えをアングロサクソン人に広めたい、といって故郷を飛び出た主人公なだけに、ラストシーンの彼の行動の悲劇性が際立ちます。

スチュアート・ペイトン(1916)『海底六万哩』

20,000 Leagues Under the Sea
製作国:アメリカ
上映時間:105分
監督:スチュアート・ペイトン
出演:アレン・ホルバー/マット・ムーア/ジェーン・ゲイル

ジュール・ヴェルヌの「海底二万里」、および「神秘の島」からエッセンスを抜き出して映画化したもの。ダン・ハンロン演じるアロナックス教授は「海底二万里」から。気球を奪取して神秘の島に不時着する一行は「神秘の島」からの登場人物です。

今から50年ほど前の話。謎の海難事故が多発。フランスの海洋学者アロナックス教授(ダン・ハンロン)はアメリカ政府の要請を受け、調査に出向いたところ、ネモ船長(アレン・ホルバー)の潜水艦ノーチラス号と遭遇。一行は囚われの身となります。一方そのころ、気球を奪って逃走していた一行は神秘の島に不時着。その島にはひとりの野生児(ジェーン・ゲイル)の他には誰もいませんでした。

ノーチラス号では気球の一行のうち一人を救助。彼を島へと送ってやります。一方そのころ、デンバー(ウィリアム・ウェルシュ)という男が自分の過去の仕打ちを後悔し、島に棄てた少女を捜すためにヨットに乗って航海に出ますが、水平たちの反乱に遭い、島に置き去りにされてしまいます。ヨットには島にいた気球の一行のうちの悪人が乗り込み、掌握。彼は野生児をさらおうとしますが、気球の一行の別メンバーに阻止されます。2人がヨットで殴り合っているところで、そのヨットが長年追い求めてきた仇のものであることを知ったネモ船長がヨットを砲撃。野生児と男を助けたネモ船長は、その野生児が生き別れた自分の娘であることに気づくのでした……というお話。

原作に忠実な映画化ではなく、2つの物語を混ぜ合わせ、さらに独自のストーリーを混ぜ込んでいるため、ストーリーが非常に入り組んでいる割に、説明が淡白なので見ていて混乱することがしばしば。そもそも気球の一行が何で気球に乗って逃げたのか(それも追っ手を銃で撃ち殺してまで)、というのが映画の中だけではさっぱり解りません。

このようにストーリーには難点はあるのですが、本作の売りである映画史上初の本格的海中撮影、海底撮影は当時としては画期的だったはずで、潜水服を着て海底を歩く俳優や、泳ぎ回る魚たちの姿は当時の観客には非常に面白いものだったことでしょう。さすがに今の目から見ると取り立てて珍しいものではなくなっているのは少々残念ですが……

チャールズ・チャップリン(1916)『チャップリンの番頭』

The Pawnshop
製作国:アメリカ
上映時間:27分
監督:チャールズ・チャップリン
出演:チャールズ・チャップリン/ジョン・ランド/ヘンリー・バーグマン/エドナ・パーヴィアンス

チャップリンの初期短編喜劇の1作。ヒロインはここのところお馴染みの感のあるエドナ・パーヴィアンス。エリック・キャンベルはやはり後半に詐欺師(というより強盗)として悪役での登場。

質屋で働いているチャーリー。遅刻の常習者で、他の店員や客と面倒を起こしてばかりの彼は、店の鼻つまみ者。しかし店主の娘に気に入られ、何とかクビをつないでいた。結婚指輪を質に入れるべきか迷い、哀れな身の上話を披露する老人などユニークな客の多い質屋だが、ある日紳士を装った悪党が来店、宝石を出せと迫る…。小道具を生かしたジョークが満載であり、質屋というシチュエーションをうまく使っている。批評的に大成功というわけではないものの、封切り当初から好評を博した秀作。

チャップリンと彼の先輩従業員であるジョン・ランド(割と重要な登場人物なのですが、なぜかクレジットされていない)とのどたばた喜劇、店主(ヘンリー・バーグマン)の娘(パーヴィアンス)への恋の鞘当て、結婚指輪を質に入れようとする老人、時計を質に入れに来た男とチャップリンの遣り取り、紳士強盗、という大きく分けて5つほどの小喜劇の連なりで本作は構成されています。

一つひとつの小ネタがなかなか面白く、チャップリンのスラップスティック・コメディアンとしての魅力がいかんなく発揮されていると言えます。序盤のシーンは脚立を使ったアクションのハシリなんじゃないでしょうか。決して好人物ではない彼の役どころもなかなか愉快。

机に置いてある時計の部品が勝手に動き出すシーンはどうやって撮ったんだろう。やっぱり机の下から磁石で動かしたりしているんだろうか……

チャールズ・チャップリン(1916)『チャップリンの放浪者』

The Vagabond
製作国:アメリカ
上映時間:20分
監督:チャールズ・チャップリン
出演:チャールズ・チャッップリン/エドナ・パーヴィアンス/エリック・キャンベル

昨日ご紹介した『チャップリンの舞台裏』(1916)と近い時期に作られた短編映画。『チャップリンの舞台裏』同様エドナ・パーヴィアンスがヒロインを演じ、エリック・キャンベルがいわゆる敵役を演じています。

酒場をクビになったバイオリン弾きのチャーリー。彼は旅先で、貧しい家で酷使されていたエドナを救い出した。そして彼女に淡い恋心を抱く。そこに画家が現れ、エドナをモデルに描いた絵が街で評判となり、彼女が貴婦人の娘であることが判明する。母親と画家はエドナを迎えにやって来るのだが…。さて、すべてを見守るチャーリーの恋の行方は? 初期チャップリン映画の中ではドラマ性が高く、1920年代の「キッド」や「サーカス」を彷彿とさせる作品。

お金持ちの子どもながら、何らかの事情(この辺りの経緯は映画では描かれていません)でジプシーの家で酷使されていたヒロインを、同じく貧しい人物であるチャップリンに救い出され、その後ひょんなところからヒロインは母親の元に帰り、チャップリンはまたひとり孤独に……と見せかけておいてのハッピーエンド。およそ10年後、D・W・グリフィス監督によって作られた『曲馬団のサリー』(1925)の筋書きと非常に良く似ています(本作は男女愛、『曲馬団のサリー』は父性愛という違いはありますが)。

allcinemaの解説にもある通り、初期のチャップリンの作品群の中ではスラップスティック・コメディとしての場面は少なめで、メロドラマ的要素の強い作品。『曲馬団のサリー』は90分の長編だったのに対し、本作は20分ほどの短編ということもあり、非常に物語がテンポよく進んでゆく、という印象。

チャールズ・チャップリン(1916)『チャップリンの舞台裏』

Behind the Screen
製作国:アメリカ
上映時間:20分
監督:チャールズ・チャップリン
出演:チャールズ・チャップリン/エリック・キャンベル/エドナ・パーヴィアンス

チャールズ・チャップリン初期のスラップスティック・コメディの短編。ノンクレジットですが、監督もチャップリンが務めている模様。共演のエリック・キャンベルもエドナ・パーヴィアンスもこのころのチャップリンの短編喜劇によく出演していた俳優です。

 1916年に製作されたチャップリン監督・脚本・主演によるドタバタ・コメディ映画。本作はアメリカ映画史上、初めて同性愛が描かれた作品としても知られている。また、それまでのチャップリン作品では本名で主演してきたチャップリンだが、本作ではキャラクター名で出演している。映画の道具方として働くデービット(チャップリン)は道具監督のゴライアにこき使われていた。そこに仕事を探している女が現れる。女は男装して道具方として働き始めるが、女性であるのがデービットにばれて執拗にキスされてしまう。その現場をゴライアに見つかってしまい…。

allcinemaの解説によると、アメリカ映画史上、初めて同性愛が描かれた作品とありますが、男性であるデヴィッド(チャップリン)と男装の女性であるパーヴィアンスの恋愛を同性愛と言うのは何か違うような……

ストーリーはあってないようなもので、小規模な映画撮影所を舞台として、小道具係のゴライア(キャンベル)と、彼の助手のデヴィッドのやり合いを中心として、それに巻き込まれる監督や他の役者たちのてんやわんやが描かれます。そして最後は爆発オチ。

コメディ映画監督がパイ投げのシーンを撮影しようとして、パイの投げ合いの乱戦状態になってしまうシーンなど、今となってはお約束ながら非常に楽しいシーンが多いです。いわゆる“天丼”的な手法が多い感じ。

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