今日こんな映画観た

日本未公開・未ソフト化の超マイナー映画から、誰もが知っている超大作まで、映画についての鑑賞メモ。
基本的にストーリーは結末まで記しているため、ご注意ください。

製作国:フランス

セルジオ・ソリーマ(1966)『見知らぬ追跡者』

Agente 3S3, massacro al sole
製作国:イタリア
上映時間:92分
監督:セルジオ・ソリーマ
出演:ジョージ・アーディソン/フランク・ウォルフ/エヴィ・マランディ/フェルナンド・サンチョ

007シリーズのヒット後、雨後の竹の子のようにポコポコと製作された一連のスパイアクションもののうちのひとつ。CIAの3S3ことウォルター・ロス(ジョージ・アーディソン)を主人公にした3S3シリーズの第2作。第一作は同じくセルジオ・ソリーマ監督の『地獄のパスポート』(1965)で、こちらは日本でも劇場公開されたようです。また、本作、前作ともにソリーマはサイモン・スターリングという変名でクレジットされています。

本シリーズについては現時点では日本でソフト化はされていません。ぼくが手に入れたのはドイツで2004年にMAGIC VIDEOから出されたものなのですが、ドイツ語音声、字幕なしというソフトのため、ストーリーの細かな内容がまったく把握できていません。ですので、内容については誤りがあるかと思いますが、ご容赦ください。

マッドサイエンティストであるカールトン教授(エドゥアルド・ファヤルド)は有毒ガスを搭載した小型のミサイルを発明し、カリブ海の小さな島の独裁者として君臨しようとしていました。CIAのエージェントである3S3ことウォルター・ロスは、現地工作員であるメンドーサ(フランク・ウォルフ)と共に内偵を進めますが、実はメンドーサは既に殺され、彼になりかわっていたのはKGBのエージェント・テレスコフだったのでした。

一進一退の攻防を続けるロスとテレスコフでしたが、やがてカールトン教授の狙いが世界征服にあることが明らかになります。そこにイギリスのエージェント・メリッサ(エヴィ・マランディ)や島のレジスタンスたちも加わり、最終的には全員が協力してカールトン教授の野望を阻止すべく戦いを挑むのでした……というお話……だと思います。多分。

お色気あり、謀略ありのなかなか洒落たスパイアクションです。ただ、上にも書いたようにぼくはセリフが全く理解できていないので、残念ながら恐らく内容の半分ほどしか楽しめていません。そんな中でも印象に残ったシーンをいくつか上げておきましょう。

まず、序盤のロスが飛行機に乗って島に向かうシーン。何者かの妨害で飛行機の落とし穴(?)が開けられ、エージェントたちがポコポコと飛行機から落ちていきます。あとは旧市街の階段道でのカー・チェイスや、その後のドラム缶を使った戦い、まるで西部劇の登場人物のようなレジスタンスたちとそのアジト(マカロニウエスタンで使われていたセットを流用したような感じです)。

また、主人公のロスは空手を習得している、という設定が前作からあるらしく、本作でも手刀で相手の首筋を打ち付けたりといったアクションを見ることができます。あと棒術がやたらと登場しましたね。

本作にはマカロニウエスタンでも馴染みの面々が顔を出しています。その筆頭がフェルナンド・サンチョなのですが、本作では善人というか、傀儡の将軍のような役どころで、登場シーンも2シーンほど。シャワールームでお姉ちゃんに迫っているところを、あっさりと殺されてしまいます。一方のフランク・ウォルフがKGBのエージェントを楽しげに演じているのが印象的ですね。結構登場シーンも多いです。黒幕であるカールトンを演じるファヤルドも、登場シーンは少ないものの、それなりに印象りました。

ソリーマの後年の作品のようなテーマ性はさほど感じられず、気軽なスパイアクションという印象の映画です。

コリーヌ・セロー(2005)『サン・ジャックへの道』

Saint-Jacques... La Mecque
製作国:フランス
上映時間:112分
監督:コリーヌ・セロー
出演:アルチュス・ドゥ・パンゲルン/ミュリエル・ロバン/ジャン=ピエール・ダルッサン/エマン・サイディ

亡き母の遺産を相続するため、彼女の遺言によってフランスのル・ピュイからスペインのサンティアゴ・デ・コンポステラまでの道を歩くハメになってしまった、中の悪い3人兄弟と、彼らと道中を共にすることになった人々の姿を描く温かなコメディ。監督は『赤ちゃんに乾杯!』(1985)などでも知られるコリーヌ・セロー。

 母親の遺産相続の条件である聖地巡礼の旅に渋々向かった3兄弟が珍道中を繰り広げるハートウォーミングなヒューマン・ドラマ。老若男女さまざまな人々が参加したツアーの道中で衝突を繰り返しながらひたすら歩き続ける3兄弟の心の再生が、美しい自然と文化遺産を背景に綴られる。監督は「赤ちゃんに乾杯!」「女はみんな生きている」のコリーヌ・セロー。
 仲の悪い3人の子どもたち、長男ピエール、長女クララ、次男クロード。ある日、彼らのもとに亡き母の遺言書が届く。そこには、遺産相続の条件として、フランスのル・ピュイからスペインの西の果て、キリスト教の聖地サンティアゴ・デ・コンポステーラ(サン・ジャック)まで1500kmにも及ぶ巡礼路を一緒に歩ききること、となっていた。信仰心などまるでない3人だったが、遺産欲しさに巡礼路のツアーに参加する。そんな彼らと2ヵ月の長旅を共にするのは、イスラムのメッカへ行けると勘違いしたアラブ系の少年や、どこかワケありな女性などそれぞれに事情を抱えた個性豊かな面々たちだった…。

以前ご紹介した『星の旅人たち』(2010)と同じく、サンティアゴへの巡礼路を舞台にした映画です。『星の旅人たち』が4人の主な登場人物を配置しながらも、主題は父・トムと息子・ダニエルの関係、そしてトムの内心の変化を描いた、ある意味で閉じた構成の映画だったのに対し、本作は3人の兄弟、高校生の女の子ふたり、ガンを克服した女性、片方は失読症であり、もう片方はツアーに参加している女子高生に恋をしているというアラブ人の青年たち、そしてアフリカ系のガイドという9人の人々が、それぞれ問題を抱えながら、巡礼に参加し、お互いに関係を再構築したり、新たに築きあげていったりするといった、群像劇の趣が非常に色濃い映画です。

9人の人物がそれぞれしっかりとキャラクター作られており(強いて言えば女子高生の片割れがいまいち印象に残りませんが)、それぞれ強みも弱みもあり、どの人物にも共感して映画を見ていくことができます。……と言って、根っからの善人というわけでもなく、人のずるさや気移りなんかも描いているところはフランス映画らしい。

『星の旅人たち』ではスペイン、フランス国境のサン・ジャン・ピエ・ド・ポールからの出発でしたが、本作はフランス内部のル・ピュイから。ル・ピュイからサン・ジャン・ピエ・ド・ポールまでは約750kmあり、サン・ジャン・ピエ・ド・ポールからサンティアゴまではおよそ800km。フランス映画ということもあり、また、序盤の人間関係を構築するまでが面白いということもあり、フランス側の描写が比較的長く、スペイン側はそれに比べるとあっさりした描写になっています。

人間を描く群像劇という意味では、本作のほうがかなり面白いと言えますが、カミノ・デ・サンティアゴの景色という意味では『星の旅人たち』に軍配が上がる気がしますね。あと、途中途中に挟まれる前衛的な夢の描写は、あまり効果的ではないような気もしました。

トーマス・アルフレッドソン(2011)『裏切りのサーカス』

TINKER TAILOR SOLDIER SPY
製作国:イギリス/フランス/ドイツ
上映時間:128分
監督:トーマス・アルフレッドソン
出演:ゲイリー・オールドマン/コリン・ファース/ベネディクト・カンバーバッチ/トム・ハーディ

ジョン・ル・カレのスパイ小説『ティンカー、テイラー、ソルジャー、スパイ』(最近新訳が刊行されました)の映画化作品。原題は小説と同じですが、邦題はなぜか意訳されています。「裏切りの」はともかくとして、「サーカス」が英国諜報部を指す、というのは少々分かりづらいような。監督は『ぼくのエリ 200歳の少女』(2008)(これも邦題が少々残念)のトーマス・アルフレッドソン。

 1979年に英国BBCでドラマ化されたジョン・ル・カレの傑作スパイ小説『ティンカー、テイラー、ソルジャー、スパイ』を「ぼくのエリ 200歳の少女」のトーマス・アルフレッドソン監督で映画化したサスペンス・ドラマ。東西冷戦下の英国諜報部<サーカス>を舞台に、ソ連の二重スパイをあぶり出すべく繰り広げられる緊迫の頭脳戦とスパイの世界に身を置く男たちの過酷な生き様を、ゲイリー・オールドマン、コリン・ファース、ジョン・ハートら英国が誇る実力派俳優陣の豪華競演とストイックな演出でスリリングかつ緊張感いっぱいに描き出す。
 英国のMI6とソ連のKGBが熾烈な情報戦を繰り広げていた東西冷戦時代。英国諜報部<サーカス>のリーダー、コントロールは、長年組織に潜んでいるソ連の二重スパイ“もぐら”の情報を掴むも独断で作戦を実行して失敗、責任をとってサーカスを去る。コントロールの右腕で彼とともに引退した老スパイ、スマイリー。ある日、英国政府のレイコン次官から“もぐら”を突き止めろという極秘の指令が下る。ターゲットとなるのは、コードネーム“ティンカー”、“テイラー”、“ソルジャー”、“プアマン”という4人の組織幹部。さっそく信頼を置くかつての部下ピーターらと組み、調査を開始するスマイリーだったが…。

ぼくは残念ながら原作は未読なのですが、2時間ちょっとという尺の中にあれだけの内容をよく納めたな、という印象。一方で、映画の尺に収めるために原作の内容をかなりそぎ落としているようで、少々説明不足に感じられるシーンも多々あります。

全体としては、地味ながら非常に緊迫したスパイ映画です。老いて諜報部「サーカス」を解雇された元諜報員スマイリー(ゲイリー・オールドマン)が、こちらも解雇された昔の上司コントロール(ジョン・ハート)の越した最後の事件を追うストーリーはとてもスリリング。時折挿入される古き良き時代のサーカスのシーンも味があります(特にラスト・シーンで流されるパーティのシーンは感傷的ながら美しい)。

しかし、ゲイリー・オールドマンももうこんな役を演じる年になっていたんですね。どうにも『レオン』(1994)の印象が強く、いつまでもあのころのイメージで見ていました。

クラウディオ・クペッリーニ(2010)『穏やかな暮らし』

UNA VITA TRANQUILLA
製作国:イタリア
上映時間:100分
監督:クラウディオ・クッペリーニ
出演:トニ・セルヴィッロ/マルコ・ダモーレ/フランチェスコ・ディ・レーヴァ/ユリアーネ・ケーラー

日本では劇場未公開ながら、タイトルのとおり非常に物静かな魅力をもったイタリアン・フィルム・ノワール。監督のクラウディオ・クッペリーニは日本では劇場公開作はないようですが、『恋するショコラ』(2007)がソフト発売されているようです。

初老のイタリア人、ロザリオ(トニ・セルヴィッロ)は妻、レテーナ(リアーネ・ケーラー)と一人息子のマティアス(レオナルド・スプレングラー)と共に、ドイツでイタリア料理店を営みながら静かに暮らしていました。そこに、イタリア時代の友人であるディエゴ(マルコ・ダモーレ)が友人のエドアルド(フランチェスコ・ディ・レーヴァ)を連れてやって来ます。

突然のことに喜びながらも動揺するロザリオ。実はロザリオにはイタリア時代、カモッラに所属していた過去があったのですが、死んだふりをして身を隠し、ドイツに隠棲していたのでした。そして、ディエゴは彼の実の息子だったのです。ロザリオにはドイツには農場の仕事で来た、と言っていたディエゴでしたが、実は廃棄物利権で対立するドイツ人実業家の暗殺に来たのでした。ディエゴとエドアルドが暗殺を行う現場を目撃するロザリオ。そして、ふとした切欠でエドアルドはロザリオの正体に気づきます。それを察したロザリオは……というお話。

オープニングのトニ・セルヴィッロが猪を仕留めるシーンからぐっと映画に惹き込まれます。『ゴモラ』(2008)にも出演していたトニ・セルヴィッロは本作でも円熟した演技を見せてくれます。この人は日本での劇場公開作が少ないのが少々残念。ロザリオが過去の亡霊に纏わりつかれはじめてからの、彼の決断、行動はまさしくフィルム・ノワール。

音楽も非常に抑制がきいていながらも不安感、緊張感を煽るすばらしい効果をあげています。セルヴィッロの演技、そしてマルコ・ダモーレの演技、更には音楽が三つ巴になったクライマックスの緊張感、そしてほろ苦さは何とも言えません。

こういう素敵な佳作が劇場未公開作になってしまう現状は、少々寂しいものです。

(1897)『LE SQUELETTE JOYEUX』

製作国:フランス
上映時間:1分

「愉快な骸骨」とのタイトルが付けられた本作は、IMDbでも製作国とタイトルなどの情報しか記載されておらず、監督の名前は残っていません。ただ、どうやらリュミエール兄弟の製作所で製作された作品らしく、おそらくは兄弟のどちらかが監督をしたものかとも思われます。

「愉快な骸骨」のタイトル通り、操り糸で操られた骸骨が、バラバラになったりくっついたりしながら踊るという、ただそれだけの1分にも満たないフィルムです。ただ、まぁ、作品として見た場合、先ほどご紹介した『L'ARRIVÉE D'UN TRAIN À LA CIOTAT』(1896)よりも本作の方が面白いです。

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