The Hunter
製作国:オーストラリア
上映時間:100分
監督:ダニエル・ネットハイム
出演:ウィレム・デフォー/フランシス・オコナー/サム・ニール/モーガナ・デイヴィーズ/フィン・ウッドロック

オーストラリアのダニエル・ネットハイム監督がタスマニアの原生林を舞台に、希少動物であるタスマニアタイガー(フクロネズミ)の密猟を依頼された男の闘いを描いたサスペンス。ネットハイム監督はもともとテレビ畑の人物のようで、いまのところ劇場作品としては本作以外には『Angst』(2000)というコメディ映画があるだけのようです。

 原生の深い森が広がるオーストラリアのタスマニア島を舞台に、絶滅したといわれるタスマニアタイガーを求めて訪れた孤高のハンターの運命を描くサスペンス・ドラマ。「スリーピング ビューティー/禁断の悦び」で監督デビューも飾ったオーストラリア期待の女流作家ジュリア・リーの同名小説を映画化。主演は「プラトーン」「アンチクライスト」のウィレム・デフォー。監督はオーストラリアのTVドラマを中心に活躍するダニエル・ネットハイム。
 フリーランスの傭兵であり、凄腕のハンターでもあるマーティン・デヴィッドは、雄大な自然が残るオーストラリアのタスマニア島に降り立つ。彼の目的は、70年以上前に絶滅したはずの幻の野生動物、タスマニアタイガーを捕獲し、その生態サンプルを採取すること。最近になって目撃情報が寄せられたのを機に、バイオ企業レッドリーフ社が彼に依頼したのだった。マーティンは現地ガイドのジャック・ミンディに紹介されたアームストロング家をベースキャンプに、捜索活動を開始する。しかし現地では、環境保護派と森林伐採業者が激しく対立し、不穏な状態が続いていた。

マーティン(ウィレム・デフォー)が紹介されたベースキャンプにはルーシー(フランシス・オコナー)と彼女の二人の子供たちサス(モーガナ・デイヴィーズ)とバイク(フィン・ウッドロック)が暮らしていました。次第に彼らと親しくなってゆくマーティン。この辺りの描写がなかなか丁寧で、後半の展開に説得力を持たせます。特にサスを演じたモーガナ・デイヴィーズの演技がとても可愛らしい。あんな賢くて可愛らしい少女に懐かれたら、強面のウィレム・デフォーでも叶わないだろう、という説得力があります。

映画の1/3ほどはタスマニアの森をタスマニアタイガーを探して歩き回るウィレム・デフォーの描写に費やされます。彼が黙々と罠を仕掛けたり、捕まえた獲物を捌いたりというシーンが非常に素敵。淡々としているのですが、ウィレム・デフォーの醸し出す雰囲気が画面を引き締めています。そう言った意味では、ウィレム・デフォーあっての本作と言うこともできるでしょう。

ルーシーの夫ジャラ(マーク・ワトソン=ポール)の死の真相が明らかになってからの展開には意外性はなく、また、マーティンの行動はプロフェッショナルとしてはセンチメンタルすぎる気もしますが、前半にある程度丁寧な描写を入れているため、映画の決定的な瑕疵にはなっていない、という感じですね。

森林保護の必要性が叫ばれる中、主要産業が林業しかないタスマニアの状況も描かれており、森林資源に頼る土地、というのは今はどこもそういった問題から自由ではいられないのだろうなぁ。