製作国:日本
上映時間:82分
監督:西村潔
出演:黒沢年男/高橋幸治/緑魔子/若宮大祐
東宝ニューアクションの代表的監督のひとり、西村潔監督のデビュー作。銀座シネパトスの特集上映「東宝ニューアクションを狙撃せよ!」で見てきました。先日ご紹介した『東京湾炎上』の監督を務めた石田勝心が、本作では監督助手として参加しているようですね。
松岡(高橋幸治)と弓子(緑魔子)は不倫の関係にありましたが、ふたりの間は倦怠期を迎えていました。密会の帰り、ふたりは国道沿いのレストランに入ります。先客は新婚ほやほやの仲睦まじい夫婦(江原達怡・田村奈巳)、常連だという初老の医師(若宮大祐)、体調不良のタクシー運転手(石田茂樹)、陽気なふたりの不良娘(木之内ゆみ・佐藤紀伊子)、それにカウンターの隅でマッチタワーを作っている陰気な男(草野大悟)。
そこに一人の青年(黒沢年男)が追い詰められた目付きで入ってきます。彼に続いて、重要犯人を追っているという警官が入ってきますが、青年は警官を撃ち殺してしまいます。それをきっかけに、青年の無謀とも言える籠城がはじまるのでした……
ほんの触りの部分をご紹介。冒頭の松岡と弓子が車で移動するシーン(この時ふたりは非常線を張る警官の検問を受けています)を除いて、ほぼ全シーンがレストランの中で繰り広げられる密室劇。恋人を愛する余り、彼女の不貞が許せず射殺してしまった青年を黒沢年男が好演しています。そこまで凶悪でないながら、警官をふたり殺してしまったことをきっかけに、箍が外れていく様を、あのギョロ目を上手く使って演じています。
もう一人の主人公である松岡ですが、彼のキャラクターが終盤までいまいち読めません。冷静なのか、冷酷なのか。弓子を愛しているのかいないのか。元カーレーサーという設定も、いまいち活かしきれているとは思えません。レーサー時代に死線を潜っているから、冷静でいられる、ということなのかも知れませんが。
その他の人物も、みなキャラが立っており、場面転換がないながらも飽きさせません。若宮大祐演じる医師は、決して褒められるようなキャラではありませんが、人間臭さが印象に残りました。
クライマックスの、本当に意外な(もはや唐突と言ってもいい)どんでん返しも面白いものでした。一応、ストーリーでフォローは入れられてますが、あのラストは予想できない……。少々粗削りながら、後のクール&スタイリッシュ路線の片鱗の見えるいい作品でした。