今日こんな映画観た

日本未公開・未ソフト化の超マイナー映画から、誰もが知っている超大作まで、映画についての鑑賞メモ。
基本的にストーリーは結末まで記しているため、ご注意ください。

監督:西村潔

西村潔(1969)『死ぬにはまだ早い』

製作国:日本
上映時間:82分
監督:西村潔
出演:黒沢年男/高橋幸治/緑魔子/若宮大祐

東宝ニューアクションの代表的監督のひとり、西村潔監督のデビュー作。銀座シネパトスの特集上映「東宝ニューアクションを狙撃せよ!」で見てきました。先日ご紹介した『東京湾炎上』の監督を務めた石田勝心が、本作では監督助手として参加しているようですね。

松岡(高橋幸治)と弓子(緑魔子)は不倫の関係にありましたが、ふたりの間は倦怠期を迎えていました。密会の帰り、ふたりは国道沿いのレストランに入ります。先客は新婚ほやほやの仲睦まじい夫婦(江原達怡・田村奈巳)、常連だという初老の医師(若宮大祐)、体調不良のタクシー運転手(石田茂樹)、陽気なふたりの不良娘(木之内ゆみ・佐藤紀伊子)、それにカウンターの隅でマッチタワーを作っている陰気な男(草野大悟)。

そこに一人の青年(黒沢年男)が追い詰められた目付きで入ってきます。彼に続いて、重要犯人を追っているという警官が入ってきますが、青年は警官を撃ち殺してしまいます。それをきっかけに、青年の無謀とも言える籠城がはじまるのでした……

ほんの触りの部分をご紹介。冒頭の松岡と弓子が車で移動するシーン(この時ふたりは非常線を張る警官の検問を受けています)を除いて、ほぼ全シーンがレストランの中で繰り広げられる密室劇。恋人を愛する余り、彼女の不貞が許せず射殺してしまった青年を黒沢年男が好演しています。そこまで凶悪でないながら、警官をふたり殺してしまったことをきっかけに、箍が外れていく様を、あのギョロ目を上手く使って演じています。

もう一人の主人公である松岡ですが、彼のキャラクターが終盤までいまいち読めません。冷静なのか、冷酷なのか。弓子を愛しているのかいないのか。元カーレーサーという設定も、いまいち活かしきれているとは思えません。レーサー時代に死線を潜っているから、冷静でいられる、ということなのかも知れませんが。

その他の人物も、みなキャラが立っており、場面転換がないながらも飽きさせません。若宮大祐演じる医師は、決して褒められるようなキャラではありませんが、人間臭さが印象に残りました。

クライマックスの、本当に意外な(もはや唐突と言ってもいい)どんでん返しも面白いものでした。一応、ストーリーでフォローは入れられてますが、あのラストは予想できない……。少々粗削りながら、後のクール&スタイリッシュ路線の片鱗の見えるいい作品でした。

西村潔(1979)『黄金のパートナー』

製作国:日本
上映時間:98分
監督:西村潔
出演:三浦友和/藤竜也/紺野美沙子/殿山泰司

銀座シネパトスの「東宝ニューアクションを狙撃せよ!」で鑑賞した二本目の映画。非常に明るいバディ・ムービーで、これがあのクール&スタイリッシュの西村潔の映画か、と驚かされましたが、よく考えてみると、そんな中にも西村色の滲み出た映画だと言えるような気がします(理由は後述)。

フリーのカメラマン・野口浩介(三浦友和)と白バイ警官・江上周作(藤竜也)は大の仲良し。今日もつるんで行きつけのバーのマスター(殿山泰司)とたわい無い会話をしながら酒を酌み交わします。二人がいつものように浩介のヨットにいると、備え付けの無線受信機が発信元不明のSOS信号をキャッチします。毎晩続くSOS信号に首を傾げる二人。マスターに相談してみると、旧海軍の暗号ではないかとのアドバイス。本気にしない二人でしたが、父親が行方不明になったという少女・由紀子(紺野美沙子)が転がり込んできて、彼女の口からサイパンの話を聞いた二人は真剣に暗号の解読に取り組みます。

やがて暗号の内容が、サイパン沖で自沈した旧日本海軍の潜水艦・イ号に隠された大量の金塊だと分かった二人は、由紀子の生まれ故郷でもあり、彼女の父が潜伏している可能性のあるサイパンを目指して、宝探しの旅に出発したのでした。サイパンをエンジョイしつつ、海に潜り沈没船を捜索する三人。やがて、イ号の航海日誌を見つけた彼らでしたが、当時の秘密を知る者を消そうとする人物の手が、彼ら三人と、由紀子の父親に迫っていたのでした……

とてもゴキゲンなバディ・ムービーです。男二人、女一人が沈没した船の宝を探す……というと、ロベール・アンリコ監督の『冒険者たち』(1967)を連想しますが、紺野美沙子演じる由紀子の結末などを考えても、間違いなく強い影響を受けていると思います。ヘタをすると『冒険者たち』の劣化コピーと呼ばれても、まぁ、致し方ないレベルかもしれません。ただ、前半のサイパンでの宝探しから一転、日本に戻ってからの黒幕を脅迫するストーリー、そして意外性のあるラストは、荒削りながらも、なかなか面白い展開でした。言うならば、B級香港映画っぽい。

どちらかというと、冷たい雰囲気の映画を撮る印象のあった西村潔監督がこんなカラッとした明るい映画を撮ったことに、当初は驚きを感じました。が、よく考えると、今まで見た4作品どれでも、彼は男同士の友情(しばしばそれは偏執的なものですが)を描いているんですよね。本作も三浦友和と藤竜也のコンビが、途中紺野美沙子を巡る恋の鞘当てを軽く繰り広げつつも、最後まで仲良しコンビであることに変わりはありません。そのため、『冒険者たち』からはバディ・ムービーという印象はまったく受けなかったのに比べ、本作がバディ・ムービーであるという印象がとても強くなったように思われます。

巷ではあまり高い評価を得ている、とは言い難いようである本作ですが、ぼくは好きです。三浦友和と藤竜也のコンビでもう何作かシリーズ化して欲しかったなぁ。言うならば、香港映画『悪漢探偵』(1982)シリーズのように。

西村潔(1970)『白昼の襲撃』

製作国:日本
上映時間:87分
監督:西村潔
出演:黒沢年男/高橋紀子/出情児/岸田森

フィルムセンターで映画を二本見たあと銀座シネパトスに移動。特集上映「東宝ニューアクションを狙撃せよ!」で『豹(ジャガー)は走った』(1970)などスタイリッシュなハードボイルド描写に定評のある西村潔監督の作品を二作観てきました。一作目は黒沢年男を主演に据えた青春ドラマ色の強いニューシネマである本作。

少年院あがりの修(黒沢年男)は店員や運送屋など様々な仕事に付くがなかなか上手くいきません。ある日、道を歩いていたユリ子(高橋紀子)を見かけた修は、彼女を家まで送ってゆきます。その後、彼女が勤めているゴーゴーバーを尋ねた修は、少年院時代の仲間で彼を兄貴と慕うゲイの青年・佐知夫(出情児)と再会します。佐知夫は在日米軍兵を父に持つ青年から貰った拳銃を修に贈ります。話の流れで一緒に暮らすことになった修、ユリ子、佐知夫は拳銃を脅しに使い、スーパーから酒や食べ物を奪い、盛り上がるのでした。

その後、海に来た修たち三人。修は生意気な大学生から車を盗もうとして失敗。大学生2人を射殺し、自らも足に重傷を負ってしまいます。修を背負い警察から逃げる佐知夫を助けたのは、通りかかった鳴海(岸田森)でした。鳴海の口利きで彼の組が経営するバーの店員となった修と佐知夫。しかし、鳴海の恩人でもある組長が出所することになると、組の権力抗争が始まり、修もそれに巻き込まれることになります……

というお話。西村監督お得意のジャズの調べに乗って、少年のころの些細な(というほど小さくはないけれど)間違いが原因で転落していく青年たちの姿が描かれます。目的を見失った情熱、という意味では『八月の濡れた砂』(1971)あたりとも共通するテーマ性を感じます。ただしこちらのほうがかなりハードですが。

普通なら修と佐知夫がふたりともユリ子を好きになっての三角関係……という展開になりそうですが、佐知夫がカマ夫と陰口を叩かれるゲイであることもあり、佐知夫とユリ子が修を取り合う展開となります。修はストレートなので佐知夫に対してそういう感情は持ってはいないものの、自分を兄と慕う彼を肉親のように思っている様子。クライマックス、ユリ子を取るか佐知夫を取るか迫られた修が取った行動とは……。ネタバレは書きませんが熱いです。女性の方が見るとまた違った感想を持たれるのかもしれませんが、男である自分としては修の行動はかなり理解でき、また共感できるものでした。

ラストの狂犬のような三人と警察隊との銃撃戦のシークエンス、そして商店街の物悲しいシーンには心うたれるものがあります。

本作では日野皓正が奏でる名曲「スネイク・ヒップ」も見どころ(聞きどころ?)のひとつですね。

西村潔(1972)『ヘアピン・サーカス』

製作国:日本
上映時間:84分
監督:西村潔
出演:見崎清志/江夏夕子/睦五郎

このブログでも『豹(ジャガー)は走った』(1970)をご紹介したことのある西村潔監督が、トヨタワークスのレーシングドライバーだった見崎清志を主演に迎えて撮影したカーアクション映画。

島尾俊也はマカオグランプリでの優勝経験もあるレーシングドライバーでしたが、同僚の事故死を期に引退し、自動車教習所の教官として慎ましく暮らしていました。ある日、教習所の教え子だった小森美樹(江夏夕子)と再会します。美樹は仲間たちとつるんで、暴走行為を繰り返していました。

美樹を諭そうとする島尾でしたが、彼女は聞く耳を持ちません。しかし、他人の車を事故に追い込んで楽しむ美樹たちの姿を目にした島尾は、ある決意を胸にハンドルを握るのでした……というお話。

クールなハードボイルド映画を撮ることに定評がある西村監督のなかなかハードボイルドなカーアクション映画。主演を務めた見崎清志は、トヨタのレーシングドライバーであり、演技経験はゼロ。そのため、カーチェイスシーン以外の演技は本当にヘタ。

しかし、本作で西村監督が撮りたかったのは、迫力あるカーアクションシーンだったのでしょう。そのため、敢えて演技には目をつむったのではないか、と思われます。その思い切った割り切りによって、確かに迫力あるカーアクション映画として本作は完成しました。

全編の2/3程度はカーチェイスシーン。そうなると、逆にだらけてしまいそうな気もしますが、見崎清志を始めとするカースタントの熱演により、なかなか見どころのあるものとして仕上がっています。ただ、ラストシーン、島尾と美樹の直接対決のシーンに、ちょっとしたラブロマンス的な演出が挟まれるのですが、その辺りは少々蛇足だったかなぁ、と。確かに二人の間には屈折した恋愛感情は感じられるストーリーではありましたが、そこに挟まなくても、という感は少々ありました。

ぼくは車にはあまり興味がないため、そういった面からはあまり楽しめませんでしたが(映画自体は楽しめました)、車にはかなり予算が掛けられているようなので、車好きの方はそういった面からも楽しめる映画だと思います。

西村潔(1970)『豹(ジャガー)は走った』

製作国:日本
上映時間:95分
監督:西村潔
出演:加山雄三/田宮二郎/加賀まり子/高橋長英/ナンシー・サマース

のちに「あぶない刑事」などのテレビドラマを中心とした演出をすることになる、西村潔がメガホンをとったクライム・サスペンス。西村監督は『死ぬにはまだ早い』(1969)、『白昼の襲撃』(1970)に続いて本作が三作目。

東南アジアの独立国家、南ネシアで革命軍によるクーデターが発生。独立の父であり独裁を敷いていたジャカール大統領は国を追われることになります。一方そのころ、警視庁の警部であり、射撃のオリンピック出場経験もあるスペシャリスト、戸田(加山雄三)に特別任務が下ります。それは、日本を経由してアメリカに亡命しようとするジャカールの警護にあたり、遊撃部隊として、テロリストを先制攻撃により排除する、という任務でした。一時的に警察を離れ、殺し屋となる戸田。一方、ジャカールの盟友でもある大日本貿易の社長は、国際的な暗殺者である九条(田宮)にジャカール暗殺を依頼します。戸田、九条、そして革命政府の三つ巴の戦いが始まるのでした。

キャッチコピーを付けるなら、「狙う田宮、守る加山、二大スター共演のクライムアクション!」といったところ。出演作をリアルタイムで観ていないぼくらの世代にとって、「たまにテレビに出て歌うたってるか、カジキ釣ってる人」という認識の加山雄三ですが、この映画では警察組織の人物でありながら、一匹狼のスナイパー、戸田を好演しています。そして、加山を上回る名演技を見せるのが九条を演じる田宮二郎。日本にはなかなかいないタイプの俳優さんで、この九条というキャラクターを違和感なく演じるには彼以上の適任はいなかったでしょう。

演出は止め絵とスローモーションを多用したスタイル。少々くどい部分もなきにしもあらずですが、ハードボイルドな映画の内容とはそれなりにマッチしていたと思います。戸田をエースと慕う若手刑事平松(高橋長英)、九条の関係を持つアメリカ人女性ナンシー(ナンシー・サマース)、そして、大日本貿易社長秘書であり、冷徹なクールビューティーを演じる加賀まり子など、脇を固める演技陣もなかなか。そもそも、深い人間描写というより、それぞれがステレオタイプのキャラクターをスタイリッシュに魅せるタイプの映画なので、このキャスティングは大正解。

クライマックス、もはやジャカール大統領云々を抜きにした二匹の狼の意地と誇りのぶつかり合い。そのスタイリッシュな演出と、圧倒的な結末は、ぜひその目で確かめていただきたい映画です。

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