倩女幽魂
製作国:香港
上映時間:93分
監督:程小東
出演:張國榮/王祖賢/午馬/劉兆銘

多くの香港映画でアクション監督を務めた程小東の代表的な監督作にして、ヒロインの小倩を演じた王祖賢の出世作にして、不世出のスター・張國榮の代表作の一本にして、80年代香港映画を代表する作品のひとつでもある、何かこう並べてみるとすごい映画です。ぼくは本作を中学生の頃見たときに非常に衝撃を受け、この作品がぼくが香港映画好きになったきっかけのひとつでもあります。今まで徐克監督作とばかり思っていたのですが、彼は本作ではプロデューサーに専念しているんですね。

 台湾出身の美人女優ジョイ・ウォンを一気にメジャーに押し上げた「チャイニーズ・ゴースト・ストーリー」の第一作目。監督としての実績はもとより、製作者としても敏腕ぶりを発揮するツイ・ハークがTV分野で活躍していたチン・シウトンを監督に抜擢、旅の青年と美しい女幽霊との愛の姿を、コミカル、アクション、官能など様々な要素を盛り込み描きあげる。
 自らの道を極めるべく旅を続ける青年ニンは、その途中、古ぼけた寺で夜を過ごしていると一人の妖艶な美女と出会い瞬く間に恋に落ちる。が、その背後には彼女を利用して人間を襲う妖怪の一味が控えており、その脅威はニンにも襲いかかる……。電影工作室の十八番技ともいえるワイヤー・ワークを使い、たなびく白い衣をまとったジョイ・ウォンが闇の中を自由に飛び回る描写はただひたすらに美しく印象的。香港映画界の新しい方向性を打ち出した。

本作は実は1959年の香港映画『真説チャイニーズ・ゴースト・ストーリー』(李翰祥監督)のリメイクなのですが、日本はもとより香港を始めとする中華圏でも本作のほうが圧倒的知名度を誇っています。また、2011年にはお馴染み葉偉信監督によって『倩女幽魂』としてリメイクされています(日本未公開・未ソフト化。ちなみに3作とも原題は同一)。

しかし、10年以上ぶりに見てみたらすごい映画でした。聊斎志異の1エピソードを映画化しているのですが、前半のラブロマンスから後半の異次元アクションものへ雪崩れ込むパワーというか、勢いがこれぞ80年代香港映画という印象です。ストーリー自体は荒唐無稽なのですが、映画内では大きく破綻しておらず、またアクションと特撮の勢いで見せきってしまう手腕はさすがというところ。

そして、ストーリーもさることながら、本作を魅力的にしているのは、やはり小倩を演じた王祖賢の美しさと、どこか抜けていながらも善人である寧采臣を演じた張國榮の可愛らしさでしょう(本作の張國榮は格好良いというより、可愛らしいといったほうが的確な気がします)。また、脇を固める燕道士を演じる午馬もさすが。ふだんはもっと飄々とした役柄が多いですが、こういった役も演じられる人だとは驚きでした(以前見たときには午馬だと気付かなかった)。