製作国:日本
上映時間:10分
監督:田中与志
フィルムセンターの「日活映画の100年 日本映画の100年」にて、マキノ正博監督の『血煙高田の馬場』(1937)と同時上映されていたので見てきました。トーキーのアニメーション映画です。本作に作画として参加している酒井七馬はその後、手塚治虫の「新宝島」の原作者としても知られるようになった人物です。
主人公の少年剣士・火の玉小僧が、殿さまに追われる町娘を、忍術を駆使して助けるコメディタッチのアニメ。製作は日活京都漫画部。キャラクターが次々に変身し、テンポの良いギャグを繰り広げていく。作画担当の1人、酒井七馬は、元々はマンガ雑誌「大阪パック」「大阪新聞」などで作品を発表していたマンガ家で、1935年に日活に入社し、アニメーターに転身している。ただし、日活京都漫画部が1935年6月に解散したため、すぐにマンガ家に戻ることとなる。その後の酒井は、戦後に手塚治虫と組んで『新宝島』を上梓したことで名を残す。
10分という短編ながら、アニメーションならではの非常に自由な発想で、思いも寄らぬ展開が次々に繰り出されます。江戸の町を大名行列が練り歩くシーンから始まるのですが、大名が乗った駕篭が放り投げられたり、馬が2足歩行で駆け出したりと、とても実写ではできない表現のオンパレード。
殿様が町娘に投げるハートマークを馬が食べてしまったり、ハートマークを追いかけた馬の首が結ばれてしまったり。怪力の捕り手が、町娘を捕えるために五重塔をだるま落としのように破壊したりと、非常に愉快なシーンがたっぷり。主人公の火の玉小僧は、忍術を駆使して町娘を助け出しますが、腕っ節はからっきし弱いという設定も面白い。キャラクターの表情などは非常にシンプルで、往年のミッキーマウスのアニメを彷彿とさせるような雰囲気もありました。
記録を確認すると、この「江戸の巻」の他にも、少なくとも3作品はこの火の玉小僧シリーズは作られているようです。