VIVA MARIA!
製作国:フランス
上映時間:122分
監督:ルイ・マル
出演:ブリジット・バルドー/ジャンヌ・モロー/クラウディオ・ブルック/ジョージ・ハミルトン
『死刑台のエレベーター』(1957)、『地下鉄のザジ』(1960)などで知られるフランスのルイ・マル監督がブリジット・バルドー、ジャンヌ・モローという二人の女性スターを主演に迎えて作り上げたコメディ・ウエスタン。ジャンヌ・モローは『鬼火』(1963)などでもルイ・マル監督の映画に出演しています。バルドーも『私生活』(1962)に主演していますね。
フランスを代表する二人の大女優が同じマリアという名を持つ歌手兼踊り子に扮し、革命のメキシコを舞台に大暴れするミュージカル調コメディ。父親仕込みのはえぬきのアナーキストのマリア(バルドー)は、流浪の果てにたどり着いたメキシコで警官に追われ、旅の一座に紛れ込む。ちょうど一座の歌手が自殺してひと騒動の時で、彼女は身代わりに花形女優のマリア(モロー)とコンビで舞台に出ることになった。“マリアとマリア”で売り出して大人気の二人。が、アナーキスト・マリアが保守派の暴行略奪を目撃し怒り心頭、相方をしり目に派手にやった。そして、革命派の指導者(ハミルトン)に互いに惚れてしまったことで、退くに退けない恋と農奴解放の大闘争に参入していく……。マルが「地下鉄のザジ」で試みたスラップスティックを西部劇風に展開。コミック的には消化不良だが、二大女優のキャラクターの違うお色気はうまく出せていたし、ノスタルジックな雰囲気作りにも成功している。
ウエスタンとして見た場合、前半の旅回りのサーカス一座のレビュー・シーンがやたらと長く、後半の革命劇との親和性もいまいちで、少々焦点が定まっていない印象を受けます。一方、ドタバタコメディとして見た場合、バルドーの性質とは非常にあっており、楽しんでみることができます。モローについては、コミカルなシーンとの親和性はバルドーと比べてしまうと少々落ちるという印象。
しかし、『荒野の用心棒』(1964)でマカロニウエスタンが大流行しはじめた直後に西部劇という話題を扱うルイ・マル監督のフットワークは非常に見るべきものがあります。というか、彼はいわゆるシネマトグラファーロ・タイプの監督ではない気がするのですが、そういった(しかもイタリア国外の)監督までが西部劇を扱ったということからも、当時の西部劇人気が見て取れます。
更に、アイルランドの革命の闘士の娘だったバルドーがメキシコ革命に参加するという筋書きはレオーネの『夕陽のギャングたち』(1971)を彷彿とさせます。また、クラウディオ・ブルックが研究している銃身が曲がった銃など、後のジャンフランコ・パロリーニ監督やジュリアーノ・カルニメーオ監督の映画を彷彿とさせるなど、(恐らく偶然でしょうが)後のマカロニウエスタンのルーツにもなり得た要素が豊富にあり、そういった観点からも見ていて楽しめます。
マカロニウエスタンでお馴染みの俳優はあまり見かけることができないのですが、サーカス一座の怪力男を演じたポルド・ベンダンディは『七匹のプロファイター』(1966)や『夕陽のギャングたち』でもその姿を見ることができます。