OSS 117: LE CAIRE, NID D'ESPIONS
製作国:フランス
上映時間:99分
監督:ミシェル・アザナヴィシウス
出演:ジャン・デュジャルダン/ベレニス・ベジョ/フィリップ・ルフェーヴル/オーレ・アッティカ
『アーティスト』(2011)が第84回アカデミー賞作品賞を獲得したミシェル・アザナヴィシウス監督と、同じく主演男優賞を受賞したジャン・デュジャルダンが以前にタッグを組んで製作されたパロディ・スパイ・アクション。ヒロインも『アーティスト』同様ベレニス・ベジョですが、彼女はアザナヴィシウスの妻でもあるので、当然と言えば当然でしょうか。
時は1950年代、フランス当局の諜報員OSS117(ジャン・デュジャルダン)は、エジプトのカイロで消息を絶った同僚の諜報員ジャック(フィリップ・ルフェーヴル)の消息を探ることを命じられ、カイロに飛びます。そこは、英仏ソ三ヶ国のスパイたちが跋扈するまさに「スパイの巣窟」でした(原題の「LE CAIRE, NID D'ESPIONS」は「カイロ、スパイの巣窟」の意味)。117は現地のスタッフ・ラルミナ(ベレニス・ベジョ)と共にジャックの消息を追います。
ジャックは消息を絶ったソ連の輸送船を追っていたことが明らかになりますが、実はその船には武器が満載されていました。輸送船の行方に英仏ソのスパイ、更にナセルによって退陣させられた旧エジプト王家、そしてイスラム原理主義の秘密組織が絡み、事態は複雑な様相を見せ始めます。果たして117は事件の真相をつかむことができるのか、そして輸送船失踪事件の黒幕は……!? というお話。
本作は明らかにショーン・コネリーが007を演じた『007/ドクター・ノオ』(1962)から始まるボンド・シリーズのパロディあるいはバスティーシュとして作られています。が、このOSS117というキャラクターはアザナヴィシウス監督の創作ではなく、ジャン・ブリュースという作家のスパイ小説に登場するキャラクターであり、スパイ映画が隆盛を極めた1960年代に、彼を主人公にした作品が何本か製作されています。日本で紹介された作品だけでも、下記の作品が確認できます。
『OSSと呼ばれる男』(1957)ジャン・サシャ監督
『O.S.S.117』(1964)アンドレ・ユヌベル監督
『バンコ・バンコ作戦』(1964)アンドレ・ユヌベル監督
『リオの嵐』(1965)アンドレ・ユヌベル監督
『O.S.S.117/殺人売ります』(1966)アンドレ・ユヌベル監督
『OSS117/東京の切札』(1966)ミシェル・ボワロン監督
このうち、『OSS117/東京の切札』を監督したミシェル・ボワロンは、ブリジット・バルドーをヒロインに据えた『気分を出してもう一度』(1959)で日本でも有名でしょう。
そんなフランス伝統の(?)スパイ映画を現代に蘇らせたのが本作および続編の『OSS 117: RIO NE RÉPOND PLUS』(2009)な訳なのですが、ボンド・シリーズのパロディとしてはもちろん、エンターテインメント作品としてもなかなか面白い、水準以上の作品となっています。デュジャルダンの演技も、往年のOSS117よりもショーン・コネリーの演技を非常に研究したような動きになっており、コネリー・ボンドを見慣れている目で見ると、かなりクスリとさせられます。
その他にも当時の(現代も?)フランス社会やフランス人気質をくすぐるような諧謔も込められており、なかなか目配りの効いた作品です。