Von morgens bis Mitternacht
製作国:ドイツ
上映時間:69分
監督:カール・ハインツ・マルティン
出演:エルンスト・ドイッチュ/エルナ・モレナ/ローマ・バーン/アドルフ・エドガー・リホ

カール・ハインツ・マルティン監督の本作は、ロベルト・ウイーネ監督の『カリガリ博士』(1919)でも用いられたドイツ表現主義的な手法を更に徹底したスタイルで描いた作品です。悪夢的に傾いたセット、病的な扮装をした登場人物たちが一種の悪夢的な世界を演出します。

本作は製作後、本国ドイツでは上映されず、1922年に日本で上映されたのが、当時唯一の一般上映だったようです。また、フィルムも残っておらず、日本に唯一残っていた無声版のプリントに、ミュンヘン映画博物館がインタータイトル(字幕)を付けたバージョンを、今回見ることができました。今回の上映はフィルムセンターの「美術館と映画:フィルムセンター以前の上映事業」という特集上映の一環です。

銀行の窓口に勤めていた男(エルンスト・ドイッチュ)は、銀行に1万マルクの融資の依頼にきた女性(エルナ・モレナ)に一目惚れ。思い詰めた男は、ちょうどその時に50万マルクの振込依頼があったのをいいことに、その金をポケットに詰め込んで銀行を飛び出してしまいます。

女の滞在しているエレファント・ホテルに行き、50万マルクを見せて一緒に高飛びしてほしいと言う男でしたが、彼女にはもう息子(ハンス・ハインリヒ・フォン・トワルドウスキ)もおり、男は当然冷たく追い出されてしまいます。警察に追われる身となった男は、一旦は家族の元に戻るものの、すぐに街へと飛び出してゆくのでした。衣装を新調したり、娼婦を買おうとしたり、競輪に大金を賭けてみたりと放蕩の限りを尽くそうとする男でしたが、救世軍に助けられたことにより、金の空しさと、家族の大切さに目覚めるのでしたが……というお話。

オープニング、傾いた銀行のセットで、白と黒の奇抜な衣装を着たボサボサ髪の男が事務作業をしていますが、この男こそ主人公。目の回りを墨で円く塗ったりと、これこそ表現主義、といったような演出で始まります。

映画は上に書いた筋で進んでゆくのですが、主人公が絶望的な方向に進もうとするごとに、物乞い、娘、娼婦、救世軍の娘などの顔が骸骨と二重写しになる演出が面白い。また、一見奇麗なことを言っていた救世軍の人々が、主人公が金をばらまき出したとたん、奪い合ってけんかを始めるなど、皮肉のきいた描写も面白い。特に最後にすがった救世軍の娘の行動がまた面白い。

クライマックス、拳銃自殺した男の上にヨハネによる福音書の「ECCE HOMO(この人をみよ)」という文字を表示させるなど、最後まで皮肉が利いた演出になっていました。ただ、本作では傾いたセットや奇抜な演出などのドイツ表現主義的手法が、コメディカルなおかしみとスレスレになっているような部分もあり、ぼくは好きですけれど、そう言った点が残念に感じる向きもあるかもしれません。