ВОЗВРАЩЕНИЕ
製作国:ロシア
上映時間:111分
監督:アンドレイ・ズビャギンツェフ
出演:ウラジーミル・ガーリン/イワン・ドブロヌラヴォフ/コンスタンチン・ラヴロネンコ
父子の関係を描いた映画というと、ジョゼ・ジョヴァンニ監督の『父よ』(2001)が真っ先に思い浮かびます。本作もそういった類型の作品かと思って見はじめたのですが、どうやらひと味違ったようです。監督のアンドレイ・ズビャギンツェフは日本で紹介された作品は本作のみ。長編監督作としては他に2本存在しているようです。原題のヴァズラシェニエは「帰還」という意味になります。
2003年のヴェネチア国際映画祭で絶賛され最高賞の金獅子賞と新人監督賞をダブル受賞する快挙を果たしたアンドレイ・ズビャギンツェフ監督による静謐で衝撃的な人間ドラマ。12年ぶりに突然帰郷してきた父親を前に、事情も呑み込めず戸惑うばかりの兄弟の姿を、謎を秘めた緊張感溢れる語り口で綴り、親子の間の絆や葛藤を鮮やかに描き出す。なお、本作撮影終了後、ロケ地だった湖で兄アンドレイ役のウラジーミル・ガーリンが不慮の事故で溺死する不幸な出来事があった。
ロシアの片田舎。2人の兄弟、アンドレイとイワンは母とつつましくも幸せに暮らしていた。父親は12年前に家を出て行ったきり音信不通。兄弟は写真でしか父の顔を知らなかった。そんなある夏の日、父が突然家に帰ってきた。寡黙な父はこれまでのことを何も語ろうとはせず、母も事情を説明しようとはしない。兄弟の戸惑いをよそに、翌朝父は彼らを小旅行に連れ出す。道中、父は子どもたちに対し高圧的に振る舞う。そんな理不尽な接し方にも、父を慕い続ける兄に対し、弟のほうは徐々に反抗心を募らせていくのだった…。
12年前に出て行ったきりということは、兄のアンドレイ(ウラジーミル・ガーリン)の方は父の記憶が朧気ながらあるのかもしれませんが、弟のイワン(イワン・ドブロヌラヴォフ)には父の記憶はまったくないのでしょう。その辺りも彼らの父へ接っする態度の違いの原因のひとつである気がします。あと、イワンの年齢的な問題もあるのでしょう。子供から青年に脱皮する微妙な年齢。しかし、イワンを演じるイワン・ドブロヌラヴォフが凄い。彼が父(コンスタンチン・ラヴロネンコ)に向ける険しい視線にはぞっとさせられるものすらあります。ポスターやDVDのジャケットにもなっているあの視線です。
映画は非常に寡黙。正直な話、説明不足との印象すら受けます。父はなぜ兄弟を無人島に連れて行ったのか。父が無人島で掘り返したものは何だったのか。そもそも12年間も何をしていたのか……などなど。そして映画は意外な展開を迎え、頑固な父とそれと同じくらい(あるいはそれ以上に)頑固だった子の和解(?)を演出するわけなのですが……。これを和解と呼んでいいのか、非常に悩むところ。少々消化しづらい映画です。
映像は非常に美しい。午前中の抜けるような青空、午後の豪雨、寒々とした防波堤の風景。ローアングルや俯瞰のアングルを多用して非常に美しい映像が展開されます。そういった意味では、台詞よりも映像で語る映画だと言えるでしょう。