製作国:日本
上映時間:83分
監督:千葉泰樹
出演:森繁久彌/小林桂樹/越路吹雪/八千草薫/三木のり平
森繁久彌と小林桂樹演じる社長と秘書の名コンビ、そして三木のり平や加藤大介といった脇を固める名役者の人気によって、33作品(数え方によっては40作品)もシリーズが制作された、東宝の「社長シリーズ」の記念すべき第一作。第4作の『社長三代記』(1958)以降は松林宗恵監督が多くメガホンを取った本シリーズですが、第1作(本作)と第2作は、「サラリーマン目白三平」シリーズなど、これもサラリーマン喜劇を手がけた千葉泰樹がメガホンを取っています。
明和商事の二代目社長・田代善之助(森繁久彌)は、技術や上がりで生真面目だけが取り柄の少々頼りない男。妻であり、先代社長の遠縁にあたる厚子(越路吹雪)にも、どうにも頭が上がりません。今日は会社の大株主会議の日。先代の娘・未知子(八千草薫)も株主会議に出席するため、大阪からやってきました。
田代は気は優しいが少々たよりない秘書・小森(小林桂樹)と共に未知子を空港まで迎えに行き、大株主会議に出席します。途中、株主の赤倉(古川緑波)や小野田(上原謙)の反対もあったものの、未知子のお陰で大株主会議は無事終了。田代と小森はお礼に未知子をお茶屋へと招待します。得意の安来節を披露する田代。すっかり楽しんだ未知子は、それを母(つまり先代の妻)であるイネ(三好栄子)に報告するのですが、それを聞いたイネに田代は、安来節なんて貫禄が無い、社長らしく小唄を習いなさいと言われ、小唄を習いに行くことになります。そして、小唄の師匠・小鈴(藤間紫)と好い仲になりかける田代でしたが、そうは問屋が卸しません。そうこうしている間に賞与支給日が近づいてきました……
後に「偉大なるマンネリ」と呼ばれることになる、森繁久彌の社長役、小林桂樹の秘書役、そして三木のり平の宴会部長役というトリオが初めて見られる作品。大笑いするような面白さはないものの、クスリと笑えるギャグや仕草が随所に散りばめられた、なかなかウェルメイドなサラリーマンコメディです。社長とは言え、妻や先代の大奥様には頭の上がらない「三等社長」という森繁の役どころが絶妙。
また、(当時落ち目であったとは言え)戦前からの有名コメディアンである古川緑波や、『三百六十五夜』(1948)、『霧の音』(1956)などにも主演した二枚目スター・上原謙が敵役として顔をのぞかせるなど、なかなか豪華な出演陣も見どころです。
また、本作だけでは赤倉や小野田が企む会社乗っ取り騒動などの顛末は描かれず、完結していないようです。続編である『続へそくり社長』と合わせてストーリーが完結する、という以降の正・続とは違う(以降のシリーズでは基本的に一本で完結する)作りになっています。