FA TALAI JONE/TEARS OF THE BLACK TIGER
上映時間:114分
製作国:タイ
監督:ウィシット・サーサナティヤン
出演:チャッチャイ・ガムーサン/ステラ・マールギー/スパコン・ギッスワーン/エーラワット・ルワンウット
タイ映画というと、『ナンナーク』(1999)が久しぶりにかなりの制作費を掛けて製作された大作、なんていう話を以前聞いたことがありましたが、本作は『ナンナーク』で脚本を務めたウィシット・サーサナティヤンの初監督作品です。公開時には「トムヤムクン・ウエスタン」なんて紹介されていたこともあったので、亜流ウエスタンに分類しています。
2001年、タイ映画として初めてカンヌ国際映画祭に正式出品されたことでも注目されたエンターテインメント・アクション・コメディ。古典的なメロドラマに西部劇の要素を持ち込み斬新な映像で味付けした楽しい一作。監督はこれまで主にCM界で活躍してきたウィシット・サーサナティヤン。2001年に日本でも公開された「ナンナーク」の脚本を手掛け、本作で待望の監督デビューを果たす。
太平洋戦争のさなか、裕福な家庭の娘ラムプイは疎開先の家庭で無口な少年ダムと出会う。身分の差を越えて次第に仲良くなる二人だったが、終戦になるとラムプイは実家へと帰っていった。やがて、成長した二人は在籍する大学で運命の再会を果たす。当然のごとく燃え上がる恋。そして、ラムプイとダムは結婚を誓い合う。しかし、久々に戻った故郷でダムは父を何者かに殺されてしまう。ダムは父の仇をとるため盗賊団の一員となる。一方ラムプイのほうは、運命のイタズラか、父親から盗賊団撲滅に執念を燃やすガムジョン警部との結婚を迫られていた……。
メロドラマ風味のウエスタンだと思って見はじめたのですが、ウエスタン風味のメロドラマでした。フィルムを前編に渡ってサイケデリックに着色してみたり、『サボテン・ブラザース』(1986)ばりの書き割りを導入してみたり、マカロニウエスタン(というよりモリコーネ音楽)や古いハリウッド映画のパロディをしてみたりと、色々やりたい放題している割に、ストーリーはおとなしめでした。
ファーイ(ソムバット・メタニー)率いる盗賊団は、「盗賊団」という触れ込みながら、盗賊行為をしている様は描写されません。マカロニ風音楽と共に疾駆するウエスタンスタイルの盗賊団を背景に、新聞記事が出て盗賊団の活躍を伝える、という描写のみ。ただ、銃撃戦はガムヂョン警部(エーラワット・ルワンウット)がファーイのアジトを襲撃する場面、ファーイが知事邸を襲撃する場面の2回あり、それぞれなかなか楽しめます。その他の描写はコミカルなのに、血が噴き出したり、腕が吹っ飛んだりというスプラッタ描写だけ、妙に生々しいのが印象的。
印象に残ったのが、主人公ダム(チャッチャイ・ガムーサン)とコンビの盗賊マヘスワン(スパコン・ギッスワーン)が絡むシーン。ギッスワーンの演技がコミカルなのもあるのですが、演出法なども凝っていて面白いです。特に1回目の二人の決闘シーン、様々なウエスタンの決闘シーンのカメラアングルを模倣しており、かなり楽しめました。
トムヤムクン・ウエスタンというと、『ロケットマン!』(2006)という映画もあるそうなので、機会を見つけて見てみたいです。