Birdman: Or (The Unexpected Virtue of Ignorance)
製作国:アメリカ
上映時間:119分
監督:アレハンドロ・ゴンサレス・イニャリトゥ
出演:マイケル・キートン/エドワード・ノートン/エマ・ストーン/ザック・ガリフィナーキス

『アモーレス・ペロス』(2000)で一躍有名になったメキシコ出身の映画監督アレハンドロ・G・イニャリトゥ監督の最新作で、2014年の米アカデミー賞作品賞と監督賞、脚本賞などを受賞したことでも話題になったのが本作。公開前にはアメリカ版ポスターと日本版ポスターの構成の違いについてもネット上の一部界隈で話題になったりもしていました。主演は『バットマン』(1989)で主演を演じたマイケル・キートンであり、本人のその経歴もあって、「バードマン」というアクション映画スターだった主人公が再起を目指す物語、という構成にかなりの説得力を与えています。

 「バベル」「BIUTIFUL ビューティフル」のアレハンドロ・ゴンサレス・イニャリトゥ監督が、かつてバットマン役で一世を風靡したマイケル・キートンを主演に迎え、公私ともにどん底状態の中年俳優が繰り広げる切なくも滑稽な悪戦苦闘の日々を、全編1カットという驚異の撮影スタイルで描き出すシニカル・コメディ。共演はエドワード・ノートン、エマ・ストーン、ナオミ・ワッツ。アカデミー賞では、みごと作品賞をはじめ最多4部門を受賞。
 かつて主演した大人気スーパーヒーロー映画「バードマン」のイメージが払拭できずに、その後は鳴かず飛ばずの俳優人生を送るリーガン。私生活でも離婚に娘サムの薬物中毒と、すっかりどん底に。そこで再起を期してレイモンド・カーヴァーの『愛について語るときに我々の語ること』を原作とする舞台を自ら脚色・演出・主演で製作し、ブロードウェイに打って出ることに。ところが、大ケガをした共演者の代役に起用した実力派俳優マイクの横暴に振り回され、アシスタントに付けた娘サムとの溝も深まるばかり。本番を目前にいよいよ追い詰められていくリーガンだったが…。

以前『マカロニ・ウエスタン 800発の銃弾』(2002)について、監督のアレックス・デ・ラ・イグレシアが「本作のラストにイーストウッドが出演してくれたら、もうそれで映画は成功したも同然だ」と言ったとか言わかったとかいう話がありますが(そして出演はならず)、本作はそういった意味でマイケル・キートンのキャスティングに成功した時点で、映画としてはまず成功したも同然、というような部分もある気がします。さらに、本作では劇中で何人ものハリウッド俳優(ライアン・ゴズリングとかメグ・ライアンとか)が実名で挙げられており、そういった点も映画のリアリティを高めることに一役買っているという印象があります。

ワンカットに見えつつも、一体どうやって撮ったのか非常に不思議な長回しなど、斬新な映像が話題になる本作ですが、そういった技巧的な部分を取り除いてみると、本作は「かつて栄光を掴んだ落ち目の男が、再起を賭けるストーリー」という、それこそキング・ヴィダー監督の『チャンプ』(1931)ではないですが、昔から繰り返し描かれてきたストーリーであり、そういった部分も観客に訴えかける要素でしょう。また、アカデミー賞受賞については、本作が「劇の映画」というアカデミー会員好みの題材であることも一因かもしれません。映画の映画とか好きですしね、あの人たちは。

才能はありながら、舞台をかき回すトリックスター的役回りを演じたエドワード・ノートンはさすがの上手さ。たまに若い頃のエド・バーンズみたいに見えたのは髪型のせいかなぁ……? 主人公リーガンの娘サムを演じたエマ・ストーンは、ぼくは『ゾンビランド』(2009)以来5年ぶりくらいに見たのですが、当時からチャーミングな女優さんという印象はありましたが、なんかかなりいい役者さんになったなぁ、という印象。特に中盤の長台詞のシーンの迫力はすごかった。

Birdman or (The Unexpected Virtue of Ignorance) (2014) on IMDb