Annibale
製作国:イタリア
上映時間:103分
監督:エドガー・G・ウルマー
出演:ヴィクター・マチュア/リタ・ガム/ガブリエル・フェルゼッティ/マリオ・ジロッティ(テレンス・ヒル)/カルロ・ペデルソーリ(バッド・スペンサー)

「ハンニバル」と言っても、リドリー・スコット監督の『ハンニバル』(2001)ではなく、1950年代から60年代はじめのイタリアで盛んに作られた史劇映画、いわゆるペプラム映画とか、日本ではサンダル史劇とか言われたりする作品群の一つです。ちなみに、ペプラムもサンダルも登場人物たちの服装からのネーミングです。監督のエドガー・G・ウルマーはオーストリア出身の映画監督で、戦前からドイツ、アメリカ、イタリアなどで映画を撮影しています。主演のヴィクター・マチュアはアメリカ出身の映画俳優で、多くの史劇映画で人気を博しました。

本作はアルプス越えの故事で有名な、第二次ポエニ戦争をハンニバルを主人公として描いています。カルタゴの将軍ハンニバル(ヴィクター・マチュア)がアルプスの向こう側まで進軍してきたとの知らせを受け、ローマの元老院では会議が行われていました。元老院議員ファビウス(ガブリエル・フェルゼッティ)はハンニバルの脅威を語り、防備を強化するべきと語りますが、ハンニバルの軍はアルプス越えで瓦解するだろうと楽観論を述べる議員も多く、会議は紛糾します。そこへ、ハンニバルがアルプスを越えはじめたとの知らせが入ります。

一方のカルタゴ軍は、アルプスで多くの脱落者を出しながらも、アルプス一帯を支配化に収めていたルタリアス(カルロ・ペデルソーリ=バッド・スペンサー)の協力もあって何とかイタリア半島に進軍することに成功したのでした。続けて初戦に勝利を収めたハンニバルは、捕虜の口からこの付近にファビウスの姪であるシルヴィア(リタ・ガム)が滞在していることを聞き、それを襲撃。彼女に付いていたファビウスの息子、クインテリウス(マリオ・ジロッティ=テレンス・ヒル)ともども捕まえることに成功しました。自分たちの本心は和平だと語り、ハンニバルはシルヴィアに自分の軍容を見せた上で解放するのでした。

ローマに戻ったシルヴィアは、ハンニバルは和平を望んでいるとファビウスに語りますが、ファビウスはそれをハンニバルの策謀と考え、取り合いません。一方、ローマ側は数度の戦いでハンニバルに敗れ、いよいよ窮地に陥るのでした。そのころ、シルヴィアの元にハンニバルからの密使が訪れます。彼に渡された指輪を持って、ハンニバルの元を訪れたシルヴィアでしたが、後を付けていたクインテリウスによって、2人でいることころを襲撃されます。ローマに戻ったあと、ファビウスに詰問され、出家を強要されるシルヴィアでしたが、夜中に屋敷を抜け出し、ハンニバルの元へと駆け付けるのでした。

その後、カンナエの戦いでローマ側のヴァロとアエミリウスは敗れ、その戦いでクインテリウスも戦死します。ローマ側はそれを受け、いよいよファビウスに指揮官を依頼するのでしたが……というお話。

映画のストーリーは上にあるものがほぼ全てです。史実ではその後、ファビウスの消極戦法によりハンニバルは消耗し、そしていよいよスキピオが登場するわけなのですが、映画はファビウスが独裁官として就任するあたりで終わっています。また、実際にはカンナエの戦い以前にファビウスは独裁官に任じられているのですが、映画ではカンナエの敗北があるまで、シルヴィアの件もあって元老院内で疎んじられています。

ストーリー自体は割と大味な歴史劇なのですが、映画前半のハンニバルによるアルプス越えのシーンは、実際になかなか過酷な雪中ロケを行っているようで、かなりの見応えがあります。ハンニバルといえばゾウですが、ゾウが登場するシーンだけはセットでの撮影っぽいのはご愛嬌。どちらにしろ、このシーンにこの映画の面白さのかなりの部分は詰まっています。

また、後年ヒル&スペンサーのコンビでイタリアのみならず、世界で人気を博す(日本ではそこまで有名ではないですが)2人がそれぞれマリオ・ジロッティ、カルロ・ペデルソーリという本名で共演しているところも見どころ。実は本作が彼らの初共演作なのです。ただ、スペンサーの出番はアルプス越え中の2シーン程度で、彼の出番と入れ替わるようにヒルが登場するため、映画内で同じシーンに出ることはありません。

本作は日本では劇場公開されたほか、VHSも発売されていますが、残念ながらいまのところDVDは発売されていません。ちなみに、VHSは英語音声版となっています。