製作国:日本(満州)
上映時間:74分
監督:佐々木康
出演:李香蘭(山口淑子)/近衛敏明/木暮実千代/浦克/藤野秀夫

1937年に満州国において設立された、満州映画協会が制作した日=満合作映画。監督は戦後は東映で活躍した佐々木康。近衛敏明、木暮実千代などの日本人キャストの多くは松竹所属の俳優であり、制作にあたり松竹が協力しているようです。

建設会社に勤める村川(近衛敏明)は、おじの河島(藤野秀夫)が支社長を務める奉天の支社に日本から転勤してきます。会社での挨拶を済ませたあと、下宿を探す村川は、街で社員の白麗(李香蘭)と出会い、彼女の紹介で部屋を見つけます。

のんびりした性格の村川は、支社長の娘である八重(木暮実千代)に好かれているのですが、それに気づいているのかいないのか。一方で彼はだんだんと白に惹かれていき、白のほうも村川を憎からず思うようになるのでした。

ある日、村川はハルビンに出張を命じられますが、満語(中国語)の分からない彼のために、白が同行するように支社長に命じられます。八重が村川に好意を持っていると知っている白は、彼女も同行させるよう支社長に頼み、3人でハルビンに行くことになるのですが……というお話。

ストーリー自体は男性1人、女性2人の恋愛映画、といった感じでそこまで特筆すべき点はありませんが、割と手堅く、丁寧に演出されているという印象があります。また、満映というとプロパガンダ映画を多く作っていた、という印象がありますが、本作にも「日本芸術、満州芸術ということではなく、東アジアの芸術という風に考えるべきだ」というような、「日満親善」のスローガンを思い起こさせる部分はあるものの、全体としては上質な娯楽映画という印象を受けます。まぁ、映画が娯楽である以上、当然といえば当然なのですが。

また、村川が同僚の王(浦克)に月給の額を聞かれて驚いたり、市場の店先に豚の足や頭がぶら下がっているのに驚いたりといった、いわゆるカルチャーギャップに当惑する場面もあり、満州ならではの映画という趣もあります。奉天やハルビンでのロケ撮影と思われる場面も結構あり、当時の街並を楽しむこともできました。ハルビンではロシア正教会の祭祀のシーンもあり、満州の民族的複雑さをかいま見ることもできます。

現在日本で出ているDVDは、おそらくは満州で公開されたフィルムを元にしていると思われ、日本語の台詞には概ね満語(中国語)の字幕が入っているのですが、満語の台詞にはあまり字幕は入っていません。この辺りは、満州の言語使用の実際を想像する上で面白い点ですね。