The Big Road
製作国:中国
上映時間:104分
監督:孫瑜
出演:金焰/陳燕燕/黎莉莉/張翼/章志直/羅朋

中国では1905年に初めて映画が撮影されましたが、1920年代後半から1930年代にかけて、上海を中心に最初の隆盛期を迎えます。この時期の代表的な作品のひとつが本作『大路』です。この時期の作品にはいわゆる左翼的な作品が多いのですが、本作もその一本であり、孫瑜も左派映画人の一人です。この時期、大手映画スタジオの支配を巡り、共産党と国民党は鎬を削っていました。

道路工事の人夫である金哥(金焰)、老張(張翼)、章大(章志直)、鄭君(鄭君里)、小羅(羅朋)の5人はそれぞれ違った性格ながら気の合う仲間でした。しかしある日、短気な章大が仕事中に問題を起こし、5人とも馘になってしまいます。街でこれからのことを思い悩んでいた5人は、食い詰めて泥棒をして逃げている韓小六子(韓蘭根)を見かけ、彼を助けてあげるのでした。

金哥の発案で、内地に行ってまた道路工事の人夫をやることにした5人に韓小六子を加えた6人、人望のある金哥の提案に、その他の仲間たちも乗ってきて、彼らは中国中を道を作って回ります。ある時、彼ら6人は近くの食堂の2人の娘、丁香(陳燕燕)と茉莉(黎莉莉)と親しくなります。

一方、敵国との戦争は彼らが作っている道のすぐ先まで迫っていました。敵国から賄賂をもらい、道路工事を中止させようとする地主の胡旦那(尚冠武)でしたが、6人は彼を売国奴だと言い、言うことを聞きません。そんな6人は胡に捕えられ、井戸の中に閉じ込められてしまうのでした。

拷問を受けても工事を辞めることに同意しない6人。一方、彼らが胡旦那に捕えられたことに気づいた丁香と茉莉は、知恵を絞って6人を助け出すことに成功します。そして、無事に道を作り終えた彼らでしたが、そこに敵国の飛行機が爆撃をしかけにやってくるのでした……というお話。

本作は半分トーキー半分無声映画のような作りで、現在の中華人民共和国国家の作曲者である聶耳による「大路歌」「開路先鋒歌」といった人夫たちが路を作りながら合唱する歌や、効果音、ピストルの音などは音が入っていますが、登場人物の台詞は音声ではなく、字幕で表示されます。

今の目で見ると、少々テンポがゆっくり目である印象も受けますが、6人のキャラクターの描き分けや、コミカルなシーンの演出、丁香と茉莉が6人を助け出すシーンの知略や活劇など、エンターテインメントとしてもしっかりした作りの映画です。

今回、中国で発売されたDVDで見たのですが、このDVDではパッケージ裏の解説に、「全国民众奋起抗日(国中の民衆が奮い立って日本に抵抗した)」と、明確に敵国が日本であるかのように書いていますが、映画中では(当時の情勢からまぁ間違いなく日本を想定してはいるのでしょうが)「敵国」との表記がされるだけで、明確には描かれません。地主の家によく見ると日本国旗に見えなくもないものが置いてはあるんですが、白黒ですし、暗いのでわかりません。

そのため、日本人(というか日本人の一人であるぼく)としても、ひとつの戦争を描いた作品として楽しんで見られますし、その辺りが映画の出来も高めているように思えます。その辺が共産党政権になってからの「抗日映画」とは大きな違いでしょうね。

最後に、茉莉を演じた黎莉莉は今回初めて見た女優さんですが、とてもきれいな女優さんでした。