製作国:日本
上映時間:12分
監督:加藤久仁生

株式会社ロボット所属の加藤久仁生が監督した短編アニメーション映画。12分というコンパクトな時間に収まったコンパクトなお話が、優しい色調とタッチの映像と、近藤研二によるピアノとギターを中心としたアコースティックな音色で語られます。

 映像作家・加藤久仁生が制作した短編アニメーションで、後にフランスのアヌシー国際アニメーション映画祭で最高賞を受賞、さらにはアカデミー賞の短編アニメ映画賞をも受賞し、一躍世間の話題となった。海面が上昇したことで水没しつつある街に一人残り、まるで塔のようにそびえ立った家で暮らしている老人がいた。彼は家が沈みかけるたびに、積み木のように上へ上へと家を建て増しすることで難をしのぎつつも穏やかに暮らしていた。そんなある日、彼はお気に入りのパイプを海中へと落としてしまう。それを拾うために彼はダイバー姿になって海中へと潜っていくが、やがて彼はかつて共に暮らしていた家族との思い出を回想していく。セリフが無く物語は淡々と進むが、海外で受賞後に日本で上映された際には女優の長澤まさみがナレーションを担当した。

上へ上へと年とともに伸びてゆく家、という舞台装置は、それを逆に下へ下へと辿ることによって、自然に過去を想起させる装置として活用されます。まず、この設定の妙と、押し付けがましくない映像によって、さらりと語られる一人の老人の人生。温かな映画です。

DVDにはオリジナルバージョンと長沢まさみがナレーションを入れたバージョンが収録されています。まず、オリジナルを見てみてください。それから、ナレーション入りバージョンを見る(ぼくはこの順で見ました)、のでも良いのですが、同じ時間を掛けるなら、もう一度、オリジナルを見ることをおすすめします。

長沢まさみのナレーションも、説明的になりすぎることもなく、言葉少なめで淡々と描写していおり好感がもてます。しかし、映像だけで十分に雄弁な物語の前では、観客の想像の幅を狭める蛇足でしかないように感じられます。