製作国:イタリア
上映時間:93分
監督:ジュリアーノ・カルニメーオ
出演:ジョージ・ヒルトン/チャールズ・サウスウッド/エリカ・ブラン/ネッロ・パザフィーニ

ジャンフランコ・パロリーニと並び娯楽色の強いマカロニウエスタン作りに定評のあるジュリアーノ・カルニメーオ監督が、アントニー・アスコット名義で手がけた作品。主演はジャンニ・ガルコからジョージ・ヒルトンに変わりましたが、『サルタナがやって来る~虐殺の一匹狼~』(1970)に続く「サルタナ・シリーズ」の正式な第5作です。

賞金首を追っていたサルタナ(ジョージ・ヒルトン)は、その賞金首が護衛を務めていた馬車が盗賊たちに襲われるのを目にします。盗賊たちは護衛を皆殺しにしたものの、金を奪うことなく、馬車にダイナマイトを仕掛け去っていきました。不審に思ったサルタナが馬車を調べると、そこには金ではなく、砂が積まれていました。

不審に思ったサルタナはメキシコ人に変装し、盗賊の首領マンタス(ネッロ・パザフィーニ)が牛耳る村に潜入します。サルタナはマンタスに捕えられていた親子を救い出し、母親からマンタスがある街の金取引に関与しているとの情報を得、街に向います。

街の銀行家スペンサー(ピエロ・ルリ)に護衛として雇われたサルタナは、スペンサーとマンタスが裏で共謀し、金を横領していることを突き止めます。サルタナはマンタスと共謀し、スペンサーから金を奪い取ろうとする一方、金を狙ってやってきたサバス(チャールズ・サウスウッド)も巻き込み、彼らを共倒れにさせて漁夫の理を狙うのですが……というお話。

主人公のサルタナを演じる俳優はジャンニ・ガルコからジョージ・ヒルトンに変わったものの、第1作を除きシリーズを通してメガホンを取っているジュリアーノ・カルニメーオが監督しているため、サルタナ・テイストはしっかりと保たれています。これでもう何作かサルタナ・シリーズが作られれば、007のジェームズ・ボンドのような存在になったのかもしれませんが、残念ながら本作でサルタナ・シリーズは終わりとなりました。

前作『サルタナがやって来る~虐殺の一匹狼~』では「皆殺しオルGUN」に代表される荒唐無稽な兵器が次々に飛び出しましたが、本作では少々おとなしめとなり、サルタナ・シリーズの原点に帰ったような印象を受けます。それでも地面から人が飛び出して馬車を襲撃したり、パンにピストルを挟み込んだ「サンドイッチ・ガン」などと言う代物を登場させたりと、カルニメーオ監督らしい遊び心は随所に見られ、非常に愉快な作品に仕上がっています。

また、本作で監督をつとめたカルニメーオ、主演のヒルトン、そしてもう一人の中心人物と言えるチャールズ・サウスウッドのトリオは、この後『荒野の無頼漢』(1970)正続篇を作り上げます。そう言った意味で、本作はサルタナ・シリーズと無頼漢シリーズの橋渡し的な作品とも言えるでしょう。むしろ、内容的には無頼漢シリーズと言ってもいいかもしれません(逆に言えば、無頼漢シリーズは名前を変えたサルタナ・シリーズとも言える)。

これは『荒野の無頼漢』にも通じる特徴なのですが、少々ご都合主義というか、辻褄合わせが乱暴な部分が目立ち、これを許容出来るかどうかが、本作を楽しめるかどうかの重要な点の一つである気がします。いや、面白いエンターテインメントなんですよ。

エリカ・ブラン、ピエロ・ルリ、ネッロ・パザフィーニなどマカロニウエスタンでよく見かける面々が脇を固めているのも、見所のひとつです。