ABDULLADZHAN, ILI POSVYASCHAYESTYA STIVENU SPILBERGU
製作国:ウズベキスタン
上映時間:88分
監督:ズリフィカール・ムサコフ
出演:ラジャブ・アダシェフ/シュフラト・カユモフ/トゥイチ・アリボフ/トゥチ・ユスポワ

1992年のウズベキスタン映画ですが、日本では2001年の12月に渋谷のユーロスペースで公開されました。レイトショーだったはずです。ぼくは当時確か高校生だったのですが、ユーロスペースではこの映画が上映される前、『不思議惑星キン・ザ・ザ』(1986)のリバイバルがレイトショーで掛かってたんですよ。ぼくはそれを見に行ったのですが、そのとき次回のプログラムとして本作が紹介されていたのを覚えています。当時から興味はあったのですが、やっと見ることができました。

 中央アジアの小国ウズベキスタンでつくられた一風変わったSF映画。ある日突然、片田舎の村にUFOが墜落、助けられた謎の少年が村人と暮らす中で様々な珍騒動が巻き起こるさまをユーモラスかつほのぼのとしたタッチで描く。ローテクの全開ぶりや、スピルバーグ監督へ向けて語られるという体裁といい、微妙なヘンさ加減がなんとも心地いい小品。
 ある日、ウズベキスタンのとある村で集会が開かれていた。モスクワからの電報を読み上げる議長。宇宙人を乗せた未確認飛行物体がこちらに向かっているとの内容に半信半疑の村人たち。そんなある日、初老の男バザルバイは奇妙な円盤が墜落する現場を目撃する。近づいてみると、そこには裸の少年が倒れていた。バザルバイは少年を助け出し、アブドラジャンと名付けて家へ連れ帰る。妻は少年を夫の隠し子と思い込むが、大きな包容力を発揮し面倒をみることに。やがて少年は次から次へと奇跡を起こして村人たちを喜ばすのだったが……。

個人的な思い出もあり、また同じ旧ソ連地域のSF映画ということもあって、どうしても『不思議惑星キン・ザ・ザ』と比べてしまいます。あの映画ほど不条理ではないですが、(おそらく)低予算ということもあり、非常に淡々と話しが進んでいくのは共通している感じ。

また、本作では村人たちはアブドラジャンの起こす奇跡に驚きながらも、比較的すぐに順応してゆきます。途中で村人たちは鍬に股がって飛べるようになるのですが、それで彼らがどこに行くかというと、市場。あくまで「ちょっと便利になった」程度に受け止めている、その受け止め方が素敵でした。

また、この映画は『E.T.』(1982)を見た村人のひとりが、村で起きた出来事をスティーヴン・スピルバーグに宛てて手紙を書く、という構成をとっており、しばしば手紙の書き手によるモノローグが入るのですが、それがどこかユーモラス。彼の筆でいろいろに評される村人たちですが、基本的には善人ばかりで、見ていて温かな気持ちになります。

また、アブドラジャンが乗ってくるUFOは明らかに逆さまになった鍋(しかもそれがスピルバーグへの手紙の中で言及されているというメタ的な構造)、しかもピアノ線がたまに見える……。『プラン9・フロム・アウター・スペース』(1959)でも円盤がピアノ線で吊り下げられていましたが、こちらは半ば確信犯的に行っており、映画自体にユーモラスな色合いを添えています。