奇蹟/MIRACLE
製作国:香港
上映時間:118分
監督:成龍
出演:成龍/梅艶芳/帰亜蕾/董驃

成龍監督、主演による20世紀初頭の香港を舞台にしたアクション・コメディ。人情味多め。

 F・キャプラの名作「一日だけの淑女」すなわち「ポケット一杯の幸福」--恐らくジャッキーの意識にあるのは後者だろう--のリメイクを試みる、その意気やよし。設定も、主役のお人好しのボスを、ひょんなことからボスにされた男と、より彼のキャラクターに合わせて変え、滑稽味を増させている。彼の助ける老女の、留学中の娘に扮するのはアイドル、G・イップ。母は娘に自分は金持ちと再婚し、良い暮らしをしていると伝えて、実は爪に火を灯すような生活で、せっせと仕送りを続けてきた。彼らのため大芝居をうって、貧者たちで社交界をでっちあげる主筋の他に、お定まりの抗争劇もあり、活劇的配慮も怠りない。少々詰め込みすぎの感はあるが、それが香港映画のサービス精神なのだ。近年も彼との共演作が続くA・ムイが彼に熱をあげるクラブ歌手役で自慢の喉を披露--ばかりでなく、従来のハリウッド調で踊っても見せる、ナイス・コメディ・リリーフ。30年代の風俗再現もなかなか雰囲気だ。

フランク・キャプラの『一日だけの淑女』(1933)および『ポケット一杯の幸福』(1961)を舞台を香港に移し替えてリメイクした作品、だそうです。残念ながらぼくはキャプラの作品を未見なので比較することはできないのですが、allcinemaで解説を見た限りだと、ストーリー的にはかなり忠実な感じですね。ただ、一点違いそうなのが、『ポケット一杯の幸福』では主役はマフィアのボスであるようなのに対して、本作で成龍が演じるのは、ひょんな間違いで黒社会の幇会のボスに仕立て上げられてしまった労働者、という点。成龍らしい巻き込まれ型の出だしとなっています。

冒頭、成龍を騙して金を巻き上げる詐欺師役として『ポリス・ストーリー/香港国際警察』(1985)などで成龍の上司役を演じた董驃が出てきます。カメオ出演的なチョイ役なのかと思っていたら、中盤に意外な役で再登場。また、警察の何隊長を演じていた吳耀漢は『霊幻道士3/キョンシーの七不思議』(1987)や『Mr.BOO!ミスター・ブー』(1976)などでもコミカルな演技を見せています。

その他にも火星や太保、午馬などのいつもの面々や、張學友なんかも出演した、賑やかな映画に仕上がっていました。成龍のアクションはいつも通り冴えているし、ストーリーは少々無理矢理な部分もありますが、お勧めの一本です。