MINNESOTA CLAY
製作国:イタリア/フランス/スペイン
上映時間:95分
監督:セルジオ・コルブッチ
出演:キャメロン・ミッチェル/ジョルジュ・リヴィエール/フェルナンド・サンチョ/エセル・ロホ

このブログでも度々取り上げているマカロニウエスタンの巨匠セルジオ・コルブッチ監督によるマカロニウエスタン。彼の代表作である『続・荒野の用心棒』(1966)よりも更に2年前の作品であり、マカロニウエスタン全体の歴史から見ても初期の作品です。ちなみに、セルジオ・レオーネ監督の『荒野の用心棒』(1964)は本作よりも少し前の作品であるようです。

 無実の罪で投獄されたミネソタ・クレイ。彼の無実を知る保安官のフォックスを探すため脱獄するが、彼の視力は日に日に弱っていた。だが、フォックスこそが彼を罪に陥れ妻をも殺した犯人だと判明する。復讐を誓ったクレイは、失明寸前の身で単身闘いを挑む。見どころは、目が見えないことを逆手に取って、敵を暗闇に誘い出し、足音や撃鉄を引く音などを頼りにクレイが次々と相手を倒すクライマックス。

DVDジャケットの煽り文句には「西部の“座頭市”」とありますが、本作の主人公であるミネソタ・クレイ(キャメロン・ミッチェル)は映画序盤では視力は落ちているものの弱視レベルですし、クライマックスでも完全失明状態ではありません。そう言った意味では後に作られた『盲目ガンマン』(1971)のほうが、「西部の“座頭市”」には相応しい。

未だ「マカロニの文法」が固まりきっていない時期の作品ながら、かつての仲間に裏切られて無実の罪で収監されていた主人公、復讐のため絶対的に不利な状況で一人で立ち向かう主人公、などのマカロニ的な要素がふんだんに見られる秀作。コルブッチの作品の中では、この2年後に作られた『リンゴ・キッド』(1966)のほうが、むしろアメリカ産西部劇風なのが面白いところ。制作環境の違いでしょうね。

主人公のミネソタ・クレイを演じたキャメロン・ミッチェルはアメリカ出身。サンダル史劇の時代にイタリアに渡り、何作もの映画に出演していたようですが、マカロニウエスタンの主演はほとんどありません。少々濃いめの顔立ちながら、アメリカ的な彼の風貌は、確かにマカロニウエスタンとは少々ベクトルが違うようにも感じられました。多くのマカロニウエスタンの主人公よりも、少しだけ年齢が上の設定なようなのも、原因のひとつかも知れませんが。

フェルナンド・サンチョ演じるメキシコ人たちに小屋を囲まれての大銃撃戦にも、後のコルブッチ節(とりあえず死体はいっぱい転がしとけ)が垣間みられますし、ラストのほぼ盲目になったクレイとフォックス(ジョルジュ・リヴィエール)一味との戦いの息詰まる演出、そして小道具の使い方も気が利いており、最後まで飽きさせない一作となっています。

DVDには、アメリカ公開版(日本で劇場公開されたときもアメリカ公開版だったらしい)のエンディングと、イタリア版のエンディングの両方が入っていますが、まったく違う印象を与えられますね。個人的にはカラッとしたイタリア版のほうが好きです。