製作国:日本
上映時間:112分
監督:山村聰
出演:南田洋子/宍戸錠/利根はる恵/浜村純/山村聡

「フィルムセンター開館40周年記念③ よみがえる日本映画―映画保存のための特別事業費による」にて視聴。ある山奥の集落を舞台に、無医村の問題をユーモアたっぷりに描いた作品。監督は俳優としても活躍した山村聰。本作でも監督の傍出演もしています。

幼友達の若者たちが、ハイキングにやってきた。美しい山の景色や、山奥に見える素朴な集落に感動していると、どうやらその集落で急病人が出たらしい。

一行の中には病院でインターンをしている俊子(南田洋子)も混じっていたため、彼らは集落に様子を見に行った。すると、畳に寝かされていたのは太助(伊藤隆)という少年。腹痛で苦しんでいる様子。女性が診察してみるとどうやら盲腸らしい。彼らは医者を呼ぶべきだと主張するが、集落には医者はおらず、山向こうの医者も数年以上来ておらず、まだやっているかはわからないと言う。若者たちは二手に分かれ、一方は村人たちと太助を看病することにし、もう一方は山向こうにいるかもしれないという医者を呼びに行くことにするが……

ラストシーンの検事(滝沢修)の言葉「医者は営業じゃなきゃいけないんですかねぇ」という言葉が印象に残る、僻地の医師不足問題に切り込んだ佳作。映画の中では解決は描かれず、視聴者に問いかけを残したまま、幕は下ります。そのため、ラストシーンは少々唐突な印象も受けます。

無医村という深刻な問題を描きつつも、開明的な東京の若者たちと迷信深い村人たちのギャップがもたらすおかしみや、周辺で唯一の医者(山村聡)と彼を嫌う米屋の大将(平田未喜造)の関係など、随所にユーモアあふれるエピソードを挟み、軽やかに描かれています。

一方で、若者たちのみが登場する序盤のシーンは、あまりにも軽やかすぎて、爽やかさが逆にシュールになっている、という不思議なシーンも見られます。

と、欠点もありつつも、ラストシーンで明かされる医者の意外な正体をはじめ、娯楽作品としてもなかなか良くできた佳作です。