製作国:日本
上映時間:114分
監督:佐分利信
出演:佐分利信/木暮実千代/阿部寿美子/三橋達也

俳優として活躍した佐分利信が監督・主演を務めた映画。監督作としては5作目になるようです。「フィルムセンター開館40周年記念③ よみがえる日本映画ー映画保存のための特別事業費による」にて鑑賞。

劇作家の杉守(佐分利信)には長いこと病の床についていた妻・さと枝(丹阿彌谷津子)がいたのでしたが、ある日亡くなってしまいます。葬儀は所属する芸文座によって行われました。杉守はそこで女優の卵・夏川文子(阿部寿美子)と出会います。

文子の積極的なアプローチに戸惑う杉守でしたが、次第にその天真爛漫な魅力に惹かれていきます。一方、芸文座に所属する女優のひとりであり、以前さと枝と杉守を取り合った過去のある神近寿英子は、杉守を心配し、芸文座の新作を杉守に頼むのでした。

文子を主役にした新作を書くことを思いついた杉守は、彼女の女優としての稽古を寿英子へと依頼します。寿英子もそれを引き受け、真摯に指導してゆくのでしたが……

名優と呼ばれた佐分利信の監督作ということで、いわゆるスター映画というか、人気俳優が余技で作った映画かと思っていたのですが、なかなかどうして、どっしりとした重厚な映画に仕上がっています。

また、主演としての佐分利信も、はじめはこの役は別に彼じゃなくても……と思っていたのですが、さすがに名優、地味ながら説得力のある演技。天真爛漫な少女を演じる阿部寿美子も非常に魅力的。また、木暮実千代も、少々きつい表情ながら、誠実な女性をうまく演じていました。

映像を見ていると、ところどころ、特徴的なカットの繋ぎ方をしている部分が(特に二人の人物が会話するシーンにおいて)見られます。個々の繋ぎ方は多少の違和感を与えるくらいなのですが、それが総合的に見てひとつの特徴、味となっているように感じられました。