天地英雄/WARRIORS OF HEAVEN AND EARTH
製作国:中国
上映時間:118分
監督:何平
出演:姜文/中井貴一/趙薇/王学圻

『双旗鎮刀客』(1990)など、古装片(中国版時代劇)を得意とする何平監督が、姜文、中井貴一という日中の演技派俳優ふたりを主演に据えて撮影したファンタジー古装片(ファンタジー成分強め)。

 「双旗鎮刀客」のハー・ピン監督が日中を代表する実力派俳優2人を迎えて贈る壮大な歴史アドベンチャー。過酷なシルクロードの大地を舞台に、遣唐使として中国に渡った一人の日本人と、逆賊として皇帝から命を狙われる元軍人の男が繰り広げる死闘とその後に芽生える友情を描く。主演は「鬼が来た!」のチアン・ウェンと「壬生義士伝」の中井貴一。共演に「少林サッカー」のヴィッキー・チャオ。
 紀元700年頃の中国。13歳で遣唐使としてこの地に渡り、現在は直属の刺客として皇帝に仕える一人の日本人剣士、来栖。彼は25年ぶりの帰国が許され、望郷の想いに胸を熱くする。そして、彼が司令官の娘、文珠を警護し長安へ送り届ける最中、皇帝より最後の仕事を命じられる。それはかつて、唐王朝最大の脅威である突厥(トルコ系遊牧民族)の女性や子どもを命令に背いて逃し逆賊となった元将軍、李を殺害せよというもの。一方その頃、逃亡生活を送る李は、天竺から皇帝へ献上する仏教経典を運ぶキャラバンの護衛として長安を目指していた…。

この映画を一言でまとめるなら「仏舎利って凄いんですね」ということになります。いや、ぼくがふざけている訳ではなく、これを読んでふざけていると思われるとしたら、脚本がふざけています。前半はファンタジー成分薄めの古装片だったのに、キャラバン隊の積荷が仏舎利だと判明した辺りからだんだんとファンタジー色が強くなり(悪い意味で)驚愕のラストに……。ラスト10分まではなかなか面白いのに……どうして全部ぶん投げた。

武侠小説、武侠映画の伝統もあるため、中国の古装片はファンタジーと非常に相性がいいんですよね。また、本作は西域の砂漠を舞台に、漢族側と突厥側の攻防という側面もあり、非常に西部劇的。途中で、「あぁ、これは中国版ウエスタンなんだ」と気づきました。突厥の兵隊たちがまるでインディアンのようにホーホー言いながら襲いかかってきますし。

中井貴一は13歳のときに遣唐使として中国に渡ってきて、30年以上も引き止められている日本人の役。この話自体はフィクションですが、一旦唐に渡ってなかなか帰ることが許されなかった遣唐使は多々居るわけで、設定自体には無理は感じられません。この中井貴一演じる来栖、全身黒ずくめの衣装でなかなか恰好いい。悪役の王学圻が白ずくめの衣装を着ていることもあり、二人の戦いは非常に映えます。

かなり予算は掛かっているようで、砂漠での砂嵐のCG、城攻めのシーン、砂漠での戦いのシーンなど、それぞれのシーンはなかなか見ごたえがあります。アクションシーンのカットが細切れなのは評価が分かれるところだと思いますが。

俳優陣では、姜文と中井貴一の主演コンビ、そして悪役の王学圻の存在感はさすが。その間に入り、ヒロインの趙薇が花を添えます。『少林サッカー』(2001)では(周星馳監督の得意技のせいで)彼女の美しさはワンカットくらいしか楽しめませんでしたが、この映画では彼女の可憐な美しさがたっぷり堪能できます。また、老用心棒である老不死的(凄い名前だ)を演じた王徳順が印象に残ります。

惜しむらくはラスト……。さらに尺が長くなってもいいから、しっかり風呂敷をたたんで欲しかったところ。