製作国:日本
上映時間:73分
監督:沢田幸弘
出演:地井武男/山科ゆり/川村真樹/井上博一

後にTVシリーズ「西部警察 PART II」や「西部警察 PART III」などの演出にも携わることになる澤田幸弘監督の手になる日活ロマンポルノ。主演はぼくが最近見る映画にちょこちょこ出てくる地井武男。近年では人の良いおじさんのイメージが強い地井さんですが、当時はチンピラ役など癖のある役柄が多かったみたい。

ある夜、町の教会に強盗が入りました。彼らは牧師(久松洪介)の娘を犯し、ベトナム戦争復興のための募金で集めた資金を奪い逃走します。牧師は警察に通報しますが、なんと、現場に駆けつけた刑事・原田(地井武男)こそが強盗団の親玉でした。しかも、この副業は所轄署長のお墨付き、という警察の腐敗ぶり。

ちょうどその頃、市内の精神病院が火事になり、入院していた中村(井上博一)が脱走します。中村は元原田らの同僚の公安部の刑事でしたが、ある出来事(劇中で詳しくは語られません)を切欠に精神を病み、悪事の暴露を恐れた警察の力によって病院に押し込められていたのでした。

中村は長野行きの列車に乗り込み、行きずりの女子高生・まりこ(山科ゆり)を人質に逃走します。それを追う原田と加藤(高橋明)。少しずつ中村に惹かれていったまりこは、中村と結ばれます。二人は従兄弟の主催する旅の一座に潜り込むのでしたが、そこに原田と加藤、そして中村の妻・添子(川村真樹)もやってきました……

「反権力」というキーワードで評されることが多い本作。確かに警察の腐敗を描こうとしている雰囲気は感じられます。地井武男と高橋明が演じる刑事コンビなんて、チンピラそのものですし。ただ、いろいろ盛り込み過ぎたせいで、焦点が合わず、散漫になってしまった感は否めず。

そもそもこれをポルノにする必然性が(ポルノじゃないと制作にゴーが出なかったという以外には)あまり認められません。警察の腐敗を描こうとしてみたり、アングラ劇団の陽気さを描こうとしてみたり、まりこの天真爛漫さを描こうとしてみたり、彼女の成長を描こうとしてみたり。はたまた地井武男演じる原田をハードボイルドに演出してみたり。いまいち一貫性が感じられないんですよね。というか、1時間ちょっとの枠に収めるには脚本・演出の力不足感は否めません。

かと言って、まったく面白く無いか、というとそんなこともなく。地井武男のギラギラした演技は非常に見ものでした。殆どのシーン、サングラスを掛けての演技なのですが、ラストシーン、サングラスを外した地井武男の目の力強さはものすごい。あと、どジャズ・ファンクの風味の強い音楽も印象に残ります。