UN FIUME DI DOLLARI
製作国:イタリア
上映時間:90分
監督:リー・W・ビーヴァー(カルロ・リッツァーニ)
出演:トーマス・ハンター/ヘンリー・シルヴァ/ダン・デュリエ/ロリス・ロディ

マカロニウエスタン草創期の一本。製作総指揮を務めたのはあのディノ・デ・ラウレンティス。彼が製作総指揮を務めたマカロニウエスタンは、本作の他にセルジオ・コルブッチが監督した『リンゴ・キッド』(1966)があります。本作も『リンゴ・キッド』もマカロニウエスタンにしてはそれなりの制作費を投入されているのでしょう。なかなかしっかりした作りになっています。まぁ、チープな手作り感がマカロニの良さのひとつではあるので、そういう意味ではB級色は薄め(本当か?)

 南北戦争が終了したとき、南軍の軍資金を強奪した二人の男がいた。彼らはクジ引きでどちらかが囮になることを決め、一人が騎兵隊に捕まった。数年後、刑期を終えた男が故郷に帰ったとき、かつての相棒が金を独り占めし、男の妻を殺害していたことを知る。男の復讐劇が始まった……。ディノ・デ・ラウレンティス製作によるイタリア製西部劇。

『リンゴ・キッド』もそうでしたが、マカロニウエスタン草創期、まだ「マカロニの文法」が定まっていない時代の作品であるため、最盛期と比べるとアメリカ製西部劇の影響が非常に濃い作品になっています。映画中盤、主人公であるジェリー(トーマス・ハンター)が町の人たちと協力してメンデス(ヘンリー・シルヴァ)の部下たちを倒すシーンがあるのですが、もう数年後のマカロニだったら町の人たちは素直に協力してくれないだろうな、と。そもそも主人公が町の住人の力を当てにするかどうかも疑問です。もちろん、主人公に協力する虐げられてきた人々、という構図は燃えるものがあるのは確かですが。

ただ、この映画の主題は「復讐」。復讐といえばマカロニ、マカロニといえば復讐(あるいは金)というくらいのテーマなので、その辺りはしっかりとマカロニ文法通り。何故か主人公を助ける老ガンマン・ウィニー(ダン・デュリエ)もキャラが立っています。ストーリーはまったく寄り道のない一本道なので、かなりシンプルではあるのですが、復讐、何だかんだ言って燃えます。レオ・ニコルズの名でモリコーネが書いたスコアも雰囲気を盛り上げます。

主演のトーマス・ハンターは、この映画のためにラウレンティスが見つけてきたアメリカ人俳優らしいのですが、本作以外で日本公開のマカロニウエスタンには出演していないようです。見覚えがあるのはジェリーを裏切った男・ケン(ナンド・ガツォーロ)の妹役を演じたニコレッタ・マキャヴェリと、ジェリーの息子役を演じたロリス・ロディといったところ。ロリス・ロディは『リンゴ・キッド』では保安官の息子を演じていたり、『殺しが静かにやって来る』(1968)では首を切られたりしていました。