ADELA HAD NO SUPPER YET
製作国:チェコスロバキア
上映時間:106分
監督:オルドリッチ・リプスキー
出演:ミハイル・ドチョロマンスキー/ルドルフ・フルシンスキー/ミロシュ・コペツキー

オルドリッチ・リプスキー監督作品、本日3作目は『アデラ/ニック・カーター、プラハの対決』です。日本語字幕付きで見られるリプスキー作品は早くもあと一本です。

ニック・カーターはアメリカの人気大衆小説の主人公。無敵の探偵です。ひとりの作家の作品というわけではなく、色々な作家がカーターを主人公にした冒険活劇を書いているようです。

この『アデラ/ニック・カーター、プラハの対決』は、そんなニック・カーターがプラハを舞台に謎の植物学者であり天才犯罪者である、クラツマル男爵こと「植木屋」との対決を繰り広げるコミカルなサスペンスです。

 英題は“アデラの夕食はまだ”。アデラとはすなわち食人植物のこと。そいつが人間として魔都プラハに現れ巻き起こす怪事件に、探偵ニック・カーター(今世紀初め世界中で人気があったアメリカのパルプマガジン・ヒーロー)が挑む。なぜそんな化け物が生まれたかと言えば、ある犯罪王の執念からなのだが、その辺は秘密ということにしておきましょう。とにかく、連続活劇のヒーローが主人公なんだから、スピーディかつキッチュなドタバタが繰り広げられ、カレル・ゼーマンを想起させるプリミティヴなSFXも楽しい限り。同じような、古いアメリカ映画の憧景に満ちた快作「レモネード・ジョー」を撮ったリプスキーの傑作ファンタジー。

カーターといえば、無敵の探偵でありヒーローなのですが、この作品のカーターはビールを飲みすぎてぶっ倒れたり、鋼鉄の扉で手を痛めたりとかなり三枚目。こちらもソーセージとウインナー好きの太っちょレドビナ警部といいコンビです。

また、007シリーズを思わせる数々の秘密兵器もコミカルで面白いです。クライマックスの太陽光線銃の下りなんて、最高に面白い演出でした。

リプスキー監督は、西部劇、SF、サスペンスといろいろなジャンルの映画を撮っていますが、(少なくとも日本で見られる作品については)コミカルな演出を得意としているのは間違いないようです。あと、早回しの演出が好きみたい。

グロテスクかつ美しい妖花・アデラの造形はあのヤン・シュヴァイクマイエル。彼の監督作品が好きな方も必見の映画です。